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道端の花

道端の花が泣いた。

何の前触れもなく。

気がついた時には、花が泣いていた。

声も出さず、周りに気づかれないように、
そっとうずくまりながら。

綺麗な体と、綺麗な色。
そんなに持って生まれてきているのに、何を泣くことがあるのか。

僕はそう思った。

花は怒った。

私の何がわかるの、と。

声を荒げた。


僕は笑った。

君の笑顔を見ると、笑えるんだ、
なんて話をしながら。

誰もいない部屋で一人。

暗い夜だった。

君はいなかった。

いると思っていたのにいなかったんだ。

僕は泣いた。

散らばった洗濯物は同情した。


泣いて笑って、また泣いて。

繰り返していく生き物だ。

花も洗濯物も僕らも。

泣いて笑って、たまに怒って。

繰り返していく生き物なんだ。


僕は冷蔵庫に入っていたビールを開けた。

プシュッという心地の良い音を聞くために。

いつもより綺麗な音が聞こえて、
僕は笑った。

プシュッという音を聞くためだけに開けたビール。

それでも夜のままだった。

それでもまた笑えたんだ。

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