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ライナーノーツ風に普通のものをレビューしてみた(2) イカの刺身

 その白く透き通った…えもいわれぬ食感…なんと例えればいいのだろう?

フィッシャーマンたちがその網を、深夜…いやそれはもはや早朝であると言っても過言ではない…に張り巡らせ捕獲し輸送されて我々のもとへやってくる。その身は、少しだけ水色であったり、時に絢爛豪華な装飾の施されたプラスティックの容器の上に並べられている。細かく輪切りにされ、ソフト(注:柔らかい)な、いや、時にはテンダーな(注:硬い)、これまでに経験したことのなかったであろう、歯ごたえを我々に惜しげもなく提供する。

 輪切りとなって白く並べられる前の全体像を想像してみよう。トライアングル(注:三角形)、スクエア(注:四角形)、そして長く伸びた…その伸縮性と粘着性は我々に何やら不吉な存在すらも想起させるほどの…10本のレッグが組み合わさった独特な形状が姿を現す。控えめに敷き詰められた香りの強いギザギザした葉…しかしその葉の存在は装飾なのか、はたまた食用なのか曖昧な…その上に少しカーブして整えられた身の白さは、外敵から身を守るために放たれるブラック・インクの黒みを完全に忘れさせる。

 これほどまでに絶妙なソイ・ソース(注:醤油)とのハーモニーを奏でる存在を私は他に知らない。それは我々に、ビッグ・ウォッシング・ベイ(注:大洗海岸@茨城県)の波の音や、あるいはまた、サウザンド・リーヴズ・プリフェクチャー(注:千葉県)の潮風を想起させる。

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