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「仮想通貨」「市場心理」に関連する英語論文を要約して紹介する記事

タイトル通り「仮想通貨」「相場心理」系の英語論文を翻訳・要約したものを載せておく記事です。
読んだし共有しちゃおー、ぐらいの気持ちで気分が乗ったら、追加していきます。
研究内容はこだわらず、アノマリーの検証だったり、機械学習・NNを使った予測モデルの検証だったり、トレーダー心理系だったり、タイトルだけみて面白そうと思った研究論文を載せていきます。
原著、大会原稿、研究会資料、紀要等の区別は行わないので、論文自体の信憑性は担保できません。間違ったことが書いてある論文も普通にあると思います。
ここではフリーアクセスの論文を扱いますが、翻案とかの関係で著作権に引っかかってるかもしれないので、もしかしたらすぐに非公開にするかもです。


(一応)orderflowの記事はしばらく更新しません。
最近は研究の方とbotの方にシフトしてて裁量トレードすらできてないんですよねー。あとowにハマってるし
あとボラが異様に小さいのもあって触る気にもならず、orderflow分析どころか相場分析すらしてない。。怠慢すぎる。
ボラ出てきたら復帰するので、そしたらまた更新します。
それまではbotのお勉強と基礎研究に精を出しますかねー。


①クリプト市場における曜日/月効果の存在検証


書誌情報

Çağrı HAMURCU(2022) 「Examining The Existence Of Day-Of-Week And Month-Of-Year Anomalies In Bitcoin」Kirklareli University Journal of the Faculty of Economics and Administrative Sciences, 11, 1, 162-183


目的

ビットコインの季節性アノマリーに関する先行研究の妥当性を調査し、相違点がある場合はそれを示すこと。


データと方法

データソース→coinmarketcap.com
調査対象コイン→ビットコイン
価格データ収集期間→2013-3-28 ~ 2021-5-31
取引量データ収集期間→2013-12-27 ~ 2021-5-31

変数に対して最も適したモデルと判断したEGARCHモデルを用い、価格と取引量について、曜日と月の影響を分析した。
解析は価格と取引量のデータの対数差をとることで行っている。


主な結果

①曜日と価格について
月曜日、火曜日、土曜日は有意水準10%で有意な結果が得られており、リターンがプラスとなっていた。

②曜日とボラティリティについて
全曜日で統計的に有意な結果が得られた(p<.001)
月曜日、火曜日、水曜日、木曜日はボラティリティが上昇していた。一方で金曜日、土曜日、日曜日はボラティリティが低下していた。

③曜日と取引量について
月曜日、火曜日、木曜日、土曜日は有意水準10%で有意な結果が得られた。このうち月曜日、火曜日、木曜日は取引量が増加し、土曜日は取引量が減少していた。

④月と価格について
2月、3月、10月は統計的に有意(p<.01)な結果が得られており、リターンがプラスとなっていた。

⑤月とボラティリティについて
2月と12月以外は統計的に有意だった。
ボラティリティは1月、3月、6月、11月に上昇し、4月、5月、7月、8月、9月、10月に低下していた。

⑥月と取引量について
6月のみ統計的に有意(p<.01)な結果が得られており、取引量が減少していた。

結果の表

まとめ

月曜日は取引量が増加してリターンがプラスになる傾向がある。一方で土曜日は取引量が減少してリターンがマイナスになる傾向がある(他は結果参照)
本研究で確認されたアノマリーはHerding behabior(群衆行動,ハーディング現象)によるものだと考えられる。

群衆行動とは?
Herding behavior is a behavioral finance tendency that occurs when rational individuals make decisions based on the assessments of others and then act irrationally(Kumar and Goyal, 2015).

訳:群衆行動,ハーディング現象:合理的な個人が他者の評価に基づいて決定を下し、非合理的な行動を起こすときに発生する傾向
別の説明:https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ha/A02764.html

コメント

結論で著者も同じこと書いてたけど、サンプル期間によって結果は変わるよねーっていう。
季節性アノマリーは定期的に検証して、結果が変わってないか確認した方がいいというtips。
統計的有意性を追求しないならスマホ1つで簡単に調査できますし!



②高頻度取引・デリバティブ取引のギャンブル性の実証


書誌情報

Philip W S Newall, Leonardo Weiss-Cohen(2022) 「The Gamblification of Investing: How a New Generation of Investors Is Being Born to Lose」 Int J Environ Res Public Health

目的

(この論文では"gablified"という単語が使われているけど、これは多分造語で「gamify(ゲーム化)」をもじったものだと考えられます。そのため以下では「gabblified」「gamblified investiment」は「ギャンブル化」「ギャンブル投資」と訳します)
(直接は仮想通貨には言及していないけど、結論部分で仮想通貨も同じよねーみたいなことを著者は示唆している、と感じたので載せました)

(前提として)本稿で定義するギャンブル投資商品が持つ3つの特徴

①ギャンブルに類似している(長期的な利益を得る投資家の割合を減らす性質)
②損失を出した投資家の行動パターンが、損をしたギャンブラーと同様の行動パターンがある
③ギャンブル業界が発展させた設計等を利用して、利益は出ないが魅力的な商品を作る

高頻度株取引とハイリスク・デリバティブ取引がギャンブル投資であることを証明することを目的としている。


高頻度株取引とギャンブル投資について

効率的市場仮説では、トレードで期待できる不確実な利益は取引手数料・スプレッド・(潜在的な)税金等を上回らないと推定される。
また行動ファイナンスの考え方では、前述のデメリットに加えて心理傾向等が加わり、さらに損失を生む可能性が高いと推定される。
そのため取引頻度の増加はリターンの減少につながることが実証されている。
また、Barber, B.M(2017)は、デイトレードはノイズや行動バイアスにさらされるため、利益を出せるデイトレーダーは5%であると結論づけている。
これはギャンブル投資の1つ目の性質は満たされていると言える。

損をしたギャンブラーは、ギャンブルをする時間とギャンブルについて考える時間が、自分の好きなことをする時間よりも長いという行動依存の傾向がある。これと同様の特徴を一部の投資家が持つことが指摘されている(Barber, B.M(2002)
また、Arthur, J.N(2016)は取引頻度の高い投資家群は、取引頻度が低い投資家群よりもギャンブルに強い関心を持っていることを示しており、J. Behav(2021)は取引頻度の高い投資家ほど問題のあるギャンブルのスコアと関連していることを示している。
以上の研究は投資家はギャンブラーと同様の行動特性を持つことが示されており、ギャンブル投資の2つ目の性質は満たされているといえる。

最近主流のモバイル投資アプリは、その使いやすさから投資家の取引性向を高め、真のコストを伝えずに手数料の低さを謳う広告は、投資家の取引頻度を高める可能性がある。
ギャンブル投資の3つ目の性質は満たされているといえる。


ハイリスク・デリバティブ取引とギャンブル投資

ここではFX、オプション商品、先物取引に焦点を当てる。
これらをヘッジせずに利用する場合、投機になる(そりゃそうだ)
これらの商品は原資産に依存し、確率的に変動するため、評価が困難である。Chague,F(2020)は先物トレーダーの97%が年次マイナスになると示唆していて、Carlson,B(2021)は外国為替トレーダーは通常1年以内に全損することを指摘している。(まだ続くけど、全部酷い結果になることが示されているだけなので割愛)
以上により、ギャンブル投資の1つ目の性質は満たされているといえる。

Williams,R.J(2021)やArthur,J.N(2015)は、ギャンブルでの損失が多い実験参加者ほど、オプション・先物・ハイリスク株・デイトレードへの関与率が高いことを示している。
これらの研究から、ギャンブル投資の2つ目の性質は満たされているといえる。

ギャンブルからハイリスク・デリバティブに適応された製品設計の特徴の一つとして潜在的な利益の魅力を広告するというものがある。(その他諸々)
ギャンブル投資の3つ目の性質は満たされているといえる。


結論

投資は、個人投資家を犠牲にして、少数の金融仲介業者が利益を得るという側面を常に持つ。
一方で個人投資家にとって有利なインデックスファンドもある。
本稿では、投資商品としての近年のトレンドは前者の個人投資家を食い物にするための新しい方法であると結論づけた。


コメント

うーん、その通り!ゼロサムは悪魔のゲームなんで!
いやでも、なんとなくは知ってたけど、トレードで勝てる人の割合あまりにも少なすぎないか!?
相場のノイズ要因と心理要因のどっちが勝てない要因として大きいのかがとても気になるところですねー
個人的には心理要因というか、個人特性の差が一番大きいと思いますが。
これを適切にモデル化できたら神指標・特徴量になりそうなんだけどなー



③クリプト市場に外れ値とジャンプがあるかの検証


書誌情報

Anupam Dutta, Elie Bouri(2022) 「Outliers and Time-Varying Jumps in the Cryptocurrency Markets」JRFM


目的

様々な仮想通貨には外れ値が存在するのかと、仮想通貨が時間変動ジャンプ(Time-varying jamp,適切な日本語訳がワカラナイ)によって特徴付けることができるのかを検証すること。


使用データと方法

データソース→coinmarketcap.com
調査対象コイン→BTC,ETH,DOGE,XRP,LTC
データ収集期間→2015-8-8 ~ 2021-9-23(日次価格)

・外れ値検出
Ané et al. (2008)に従って外れ値を検出している。

$${Rt+1∈[Rt,Rt+1±F(1-α/2)σt,t+1]}$$

$${Rt+1}$$がこの区間に含まれない場合に外れ値とみなしている。
ただしRtはt日目のコインの対数リターンであり、AR(1)-GARCH(1,1)モデルに従う。

・時間変動ジャンプのモデル化
時間変動ジャンプをモデル化し、モデルの結果からジャンプの仮想通貨市場との関係を探っていく。

(数式の入力が面倒なのでモデル内容の部分を丸載せします)
Rtはt日目の対数リターン、εtはt日目の誤差項を指す。
誤差項は(4)の通り2要素から成り立っている。
$${ε2t}$$式に含まれるUtlはジャンプ(非連続的な急激なリターン変動)の大きさ、ntはジャンプ回数を指す。
λ0はジャンプ強度(ジャンプがどれだけ頻繁に起こるか数値化したもの)でλtはジャンプ強度パラメータを指す。


結果

まずは外れ値について。
外れ値検出の結果から、極端な外れ値はBTCのリターン系列にのみ発生していた(抽出した期間中では16個)
これらは主に高騰の後に発生していた。
また外れ値を除去すると標準偏差は26%ほど減少し、平均リターンは大幅に増加したことから、BTCのリターン系列はマイナスの外れ値に歪められていることが読み取れる。

次に時間変動ジャンプについて。
モデルの結果から、BTCとLTCは統計的に有意なジャンプ強度パラメータ(λ0,ρ,γ)が確認された。またBTCは外れ値の存在を考慮してもジャンプが存在することが確認された。
ρ,γの数値から4つの仮想通貨はジャンプ強度に持続性があることも示唆された。
これらの結果は、仮想通貨はジャンプによって特徴付けられることを示唆している。ジャンプの存在は仮想通貨市場の不安定性を示しており、暴落のシグナルを事前に検知できる可能性があることからも重要なデータであると考えられる。


コメント

金融工学要素が強めの内容でしたね。用語と概念の勉強になりました。
要はデータとして利用した仮想通貨は、仮想通貨市場の過半数の出来高を占めてて、これらの仮想通貨にはジャンプがあるって言えるから仮想通貨市場は不安定だよねー。
投資家はジャンプの情報をうまく利用しなきゃだよねー。
みたいな話になってたかと思います。
本文に挙げられていたジャンプ情報を利用した暴落検知はむちゃ気になるので、次はこれを扱います(フリージャーナルであってくれ)

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