オペラ:La Traviata 『椿姫』

2019/10/16, @Palais Garnier

図らずも千秋楽。ただし、舞台装置のトラブルで開演遅れ。ちょっとグレードを上げて25€の席で見た。字幕は見えない&音の聴こえ方もイマイチだが、距離は近い。

2回チケットを取るのに失敗して漸くの『椿姫』なので、かなり期待値は高かった…が結論から言えば、ちょっと微妙だった。10€の席でもよかったかも。オペラを見るなら、バスティーユの方が、いい席で観られるし、演出ももっと大掛かりだからいいかもしれないと思った。Palais Galnierは古いし狭いし豪奢な造りだから、難しいのかもと思う。

『椿姫』はヴェルディが1853年に発表したオペラ。オペラ原題はLa Traviata(堕落した女)だが、日本では原作小説(デュマによる)のタイトルから『椿姫』と呼ばれている。

演出家Simon Stoneは、この『椿姫』を、すごく大胆に塗り替える演出をしていた。時代設定を現代にして、ヴィオレッタはSNSの女王、舞台中央に置かれた黒い箱に投影されるのは、ヴィオレッタのinstagramのページだったり、写真についたコメントだったり、メッセージだったり…

そういうアケスケともとれる、徹底的に現代の演出は、衆目を集めるのにも一役買ってると思うし、オペラを観ているというより面白いミュージカルを観ているという気分になったし、私にとっては感情移入もしやすくなったと思う。ただ、スキャンダラスで現代的で大胆で面白かったから、手放しに、すごくいい演出でこれは後世に残る演出だったとは言えないだろう。私は泣いたけど、色々なLa Traviataを比較できる記憶のストックがある人なら、どう感じるのだろうか。面白い演出だったけど、真に迫るものではないと斬って捨てるだろうか。それとも、現代の若い人たちがリアリティを感じてこそだと思うだろうか。確かに、21世紀に生きているのに、19世紀のことをいつまでも再現されても困るし、正直言って分かんない、ってなってしまうのは当たり前のことだ。

Le Mondeを読んでみると、「また椿姫??散々やったじゃん(Palais Galnierでは、過去20年に3人が演出しているらしい。それを「散々」と言えるのは、フランス人ってすごいと思うけど…)と言う人もいると思うが、これは『椿姫 ver.2.0』だ。少し蛇足な演出も見受けられたものの、Simon のPalais Garnierデビューはスキャンダラスなものになった。」と評していた。

なんだか最近、舞台上にスマホがあり、SNSがあるだけで「現代的だ!!!!面白い!!!!」と思ってしまっている。そういうことじゃないはずなのだが、あの小さな四角い物体、とても小さいのに、舞台上ではとても存在感がある。舞台上で写真を撮る、という動作が、とても印象に残ってしまう。

でもオペラって観ていて楽しいものだな、と知る。





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