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ホームレスのたっちゃん

どういう経緯でたっちゃんと知り合ったのかは、今はもう覚えていない。10年くらい前の話。当時まだ早稲田の学生だったからもっと古い話かもしれない。学生会館からほど近い、戸山ハイツを写真に収めようと足繁く通っていた。僕が衝撃を受けた奈良原一高の人間の土地の舞台である軍艦島もそうだが、狭いエリアにコミュニティが形成されている地区というものに魅力を感じていたのだ。

たっちゃんは本名だったのか今となっては推測することしかできないが、戸山ハイツの近くにテントを張って暮らしていた。戸山ハイツの真ん中にある公園に行くと大抵いた。ニッカウィスキーを持って会いに行っては、色々な話を聞かせてくれた。

一緒にたっちゃんの家(テント)にとめてもらった事も有った。正直その臭気に気分が悪くなったこともあったが、それでも楽しく夜をあかしたものだ。

彼はある意味紳士的だった。火曜日ならいると、いつも公園に座っていた。他の日はなにやら出掛けているみたいだったが詳しいことは聞かずじまいだった。

その時はNIKONのF4とミノルタα9を使っていた。トップの写真は僕のF4を使うたっちゃん。

とある日から火曜日なのにたっちゃんの姿が見えなくなった。心配してもなにも手だてがない。

その5年後、僕たちは山谷で再会することになるとは思いもしなかった。

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