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自然に配慮する製薬会社〜映画『OLD』を観て

『シックスセンス』などの監督M・ナイト・シャラマンの新作『OLD』を観た。以下ではネタバレも含むので、ご注意ください。なお画像は『OLD』のものではありません。

あらすじ

舞台はある雄大な自然に溢れる魅惑的なビーチ。

切り立った岸壁で外界から隔てらたこの美しいビーチには、ある秘密が隠されている。
それはこのビーチで働いている急速に人を老させるエネルギーである。

このビーチでの30分は外界での1年間に相当し、24時間滞在すればほぼ50年の時を過ごしたことになる。
そして一度このビーチに入り込むと、ビーチのエネルギーに阻まれ脱出は不可能となり、入り込んだものは急激な老いによって1〜2日で死に至るのである。

このビーチに働く特殊な力に目をつけたのが製薬会社であった。
長期に渡るモニタリングが必要な治験をこのビーチではたったの1日で行うことができる。
リゾートホテルにカモフラージュした製薬会社は、開発中の薬をウェルカムドリンクとして被験者に服用させ、ビーチに誘き寄せ、その経過を観察していたのである。

物語は何も知らないままビーチに誘い込まれた被験者が、どうにかそこから脱出しようと葛藤する様子が描かれている。


地上の楽園が一気に地獄へと変容する様は、『ミッドサマー』(2019)や
レオナルド・デカプリオ主演の『ザ・ビーチ』を思い起こさせる。
ホラー映画といえば、密室や陰鬱な雰囲気が舞台となることが多いので、映画のほとんどが美しいビーチに限られているのは意表を突かれてとても面白い。
ただ、すでに多くの人に指摘されているように、設定の甘さが気になってしまった。

生き残ったガイ家族の姉と弟は珊瑚礁でできた天然の洞窟を通ればビーチから脱出できることを発見する。
無事2人は助かるのだが、綿密な隠蔽工作をする製薬会社が珊瑚礁をそのままにしておく意味がわからない。
これほど非人道的な実験をしておきながら、珊瑚礁には手をつけないってどういうこと?
自然には優しい製薬会社だったのだろうか?

本作は2010年に発表された『サンドキャッスル』というグラフィックノベルにインスピレーションを受けたもので、製薬会社の設定はシャルマンが付け足したものらしい。コロナのワクチンの開発が異様な速さで進んだことを思い返すと、なんだか時世とマッチしている。

とつらつら書いてみるとなんだか面白くなさそうな映画に見えるが、楽しく鑑賞しました。
そんなに怖い描写もないのでホラーが苦手な自分でも大丈夫でした。


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