韓流ドラマに1ミリも興味なかった41歳おっさんが『愛の不時着』にドハマリした4つのポイント
Netflixの日本視聴者数でここ数ヶ月ずっと不動の1位を飾っているNetflixオリジナル配信の韓国ドラマ『愛の不時着』。コロ助でのステイホーム効果もあってか、ヨン様の『冬のソナタ』以来の韓流ドラマブーム到来とも言われている。しかし、冬ソナや以降の韓流ブームと決定的に違うのは、それまで韓流文化のほとんどは女性人気によって支えられてきた。しかし、この『愛の不時着』に関しては世代間や男女間問わず人気の作品ということだ。これを書いているぼく(41歳既婚だけど離婚協議中)も、これまでの韓国ドラマには一切興味がなかった。とはいえ古くはチェ・ジウとクォン・サンウ主演の『天国の階段』や、妻のすすめで最近の『恋はチーズ・イン・ザ・トラップ』なども見てきているので、食わず嫌いというわけではない。面白いとは思うが、韓国ドラマは「色々な事柄が過剰な味付け濃い目」「ロミオとジュリエットのような様々な障壁のある恋愛」がメインで、なんともまどろっこしさを感じていた。
この『愛の不時着』も、まさにその王道であるロミオとジュリエット的展開の恋愛劇なのだけれど、面白いのは韓国の財閥令嬢が、パラグライダーで竜巻に巻き込まれたことで、軍事境界線を超えて北朝鮮に飛ばされてしまい、そこで運命の相手と出会うというスケールの大きい設定、あとこれは多くの感想で見かけるが北朝鮮の謎に包まれていた庶民の生活風景、そしてピンチの時、お互いが命をかけて守り合うという今の時代にぴったりな男女関係を描いているところに多くのひとが惹きつけられたのだと思う。
では41のおっさん(ぼく)が2周したくらいハマったさらに個人的な『愛の不時着』の好きなポイントを4つをあげていきます!
1.兵隊モノ(同士愛・友情愛)としての見どころ満載
第1話は韓国の財閥令嬢で実業家でもあるユン・セリがパラグライダーの事故で軍事境界線を超えて北朝鮮側の非武装中立地帯に不時着してしまう。そこで朝鮮人民軍総政治局局長の息子リ・ジョンヒョクと運命の出会いをするのだが、安全な生活圏から一気に地雷原のある場所へと舞台が変化するところで緊張感が高まる。そして北朝鮮軍にみつかったユン・セリが地雷原を突っ走っていくもんだから、ハラハラしながらもどうなっていくのか物語に引き込まれていく。
これまで北朝鮮軍を扱った映画としては『エネミー・ライン2 -北朝鮮への潜入』など、戦闘に特化した部隊ばかりで人間味がなかった。それが『愛の不時着』ではリ・ジョンヒョクの部下たち4人(第5中隊)の、人間味あふれる描写は斬新だった。リ中隊長への忠誠心を持ちつつも駄目っぷりがお茶目だったり、お互い仲間思いなところなどは見ていて何度も心が温まったし、目頭も熱くなった。戦争モノの映画がぼくは好きなんだけど、そこには同じ人類がなぜこんな悲しい争いをするのかといった大きなテーマ以外にも、限界状態における愛する人との別れや、兵隊同士の友情というか絆が強く描かれるので、命を張って仲間を助けにいったりもすれば、弱みを握られて裏切ってしまった時の悲哀など、同性の友人に感じる思いが心に響くので、つい戦争モノは好んで見てしまう。『愛の不時着』も、仲間をかばう熱い絆や、逆に裏切ってしまい、ずっとひとりで抱え込むひとの苦悩に何度も泣かされた。
恋愛モノとしての『愛の不時着』は、韓国ドラマにありがちな障壁のある恋愛というのを超えていないが、その障壁が国同士というのは最初に話したようにスケールが大きい。特に同じ民族ながら大国の思惑で分断しており、北朝鮮と韓国は未だに休戦状態のままだ。そんな悲しい分断において北朝鮮人と韓国人との恋愛というのは、やはり胸にくるものがある。1999年の韓国映画『シュリ』もそんな北朝鮮人と韓国人の悲しい恋愛を描いた名作で、日本でも大ヒットを飛ばした。あれから20年経ったが、いまだに両国の統一はなされていない。その悲哀もあって、愛しちゃいけないひととの出会いにより愛しさが深まるのだ。
ちなみに、劇中のとあるシーンで北朝鮮人と韓国人が一緒になって大盛りあがりする場面がある。あそこは日本人としては複雑な気持ちになるひともいるかもしれないが笑、ぼくは一日も早く過去の因縁を断ち切って南北の統一を願わずにはいられなかった。
てなわけで、まずは戦争モノが好きなおっさんでもめっちゃ楽しめる要素が満載!
2.男も女も愛する相手をお互いに命を張ってでも助け合うところ
ユン・セリの会社名はセリズ・チョイスという名の通り、セリの信念は自分の人生を他人に委ねず自分で選択していくところにある。だから、第1話でリ・ジョンヒョクに右に行けば韓国に戻れると言われたのにも関わらず、セリはそのアドバイスではなく自分の選択で行く先を決める。その結果、北朝鮮についてしまい大変な目にあうのだけれど、運命の愛するひとと出会うことはもちろんのこと、韓国では得ることができなかったひとからの思いやりや温かさに包まれて、セリ自身も心の殻に閉じこめていた優しさを取り戻す。財閥令嬢かつ会社の社長としてずっと損得勘定で生きてきたセリが、自分が帰国することより負傷したジョンヒョクを助ける選択をしたりするところも熱い展開だ。ジョンヒョクもジョンヒョクで大好きだった兄を亡くしたことで、二度と自分の大切なひとを亡くしたくないという信念から、自分がいかに不利な立場になろうとも、全力でセリを守り抜く。ふたりの信念は違うのに、お互いがどちらも命がけで相手を守り抜くのだ。どっちかがどっちかに依存した関係ではない。ただ、お互いの考え方や信念が違うから、その都度、傷つけ合ってしまい、そういうところは見ていて辛くて泣けるし、誤解がとけるところは嬉しくて泣ける。どっちにしろ泣ける笑
そして女性だけではなく、男性がこのドラマに強くハマるのも、自分がもし倒れた時に、経済的にもメンタル的にも頼りになる彼女がいたら心強いと思うからだ。今の世の中はどんなに稼いでいてもいきなり不運なことで倒産して一銭も稼げなくなることもある(実際、コロ助によって黒字だった飲食店が廃業に追い込まれている昨今だ)。それに病気で倒れた時に、まったく看病もせず、お金も入れてくれない相手だったら悲しいのは男だって同じこと。不況かつ男女平等が叫ばれている世の中になってきたからこそ、お互いが助け合い、思いやれる精神が、ぼくには見ていてとても尊く感じた。
こういうパートナーが欲しい。このドラマを見てそう感じる男性は多いだろう。今や姫は騎士に守られるだけではない。騎士を守る姫でもあるのだ。
ただ、これは今の時代だからこそ共感を呼ぶもの。だからぼくはこのドラマにハマりつつも、時代の洗礼を受けて名作として残るかは微妙だとは思っている。たとえば、黒澤明監督の『七人の侍』は名作映画だが、今見るとピンとこないひとがぼくを含めほとんどだと思う。でも名作と言われているから、なんかわからんがすごい映画だと訳知り顔している映画マニアも多いのでは?どうしてそうなるかというと、『七人の侍』も強く時代性を表している作品だからだ。当時の社会を生きているひとが見ないと面白さが実感できない。
第二次世界大戦敗戦後、多くの人々が食べるものに困っていた時代。米を生産していた農家の多くが強者だった。人々は高価な品の対価としてほんのわずかばかりの米を受け取っていた。戦場から引き上げてきた兵士たちが弱者で、米を持っている農家が強者だった。そんな時代の空気感だったからこそ、農家が米で侍を雇い、侍に最後に「勝ったのはあの百姓たちだ、儂たちではない」と黒澤明は言わせたのだ。だから大ヒットにつながった。
『愛の不時着』が本国韓国や日本で流行っているのも、男が一家の大黒柱といった概念が消失した現代だからこそ。男女が経済的にも精神的にも助け合っていかないと生き抜いていけない時代となったのだ。そういったことを念頭に置いて見ると、劇中のほとんどの北朝鮮の軍人が奥さんに喧嘩でも負け、家庭内の立場も下というのは実に味わい深くておもしろい笑
3.仁義と任侠の世界観
親が自分の子供が信念を貫くところを応援している点。
これは同じく大ヒットを飛ばしているNetflixオリジナルの韓国ドラマ『梨泰院クラス』でこそ語りたいテーマだが、『愛の不時着』でも、自分の子供が己の信念に従い正しいと思う行為をしたことで、世間や権力側から潰されそうになっても、徹底的に身びいきで守り通し、むしろ誇らしく思っているところだ。ジョンヒョクの母親はわかりやすいが、実は父親も言葉では厳しいことを言うが、徹底的に世間体よりも息子の行動を応援し無事を案じている。
ジョンヒョクがピアニストになる夢を諦めて、大好きな兄が不正に殺されたことを徹底的に調べているのも、家族愛であると同時に仁義を重んじているからだ。いざという時に「いもをひかない」のもヤクザの世界観に通じるものがある。儒教国家の韓国ならではといったところ。
ただ、これも強すぎると潰されてしまう思想なので(現に韓国は自殺率男女ともに世界トップ。キリスト教×儒教の道徳観は尊さと同時に社会の息苦しさも生んでしまう二面性を持つ)、あくまで美しい家族愛として見ておくのがいいと思う。しかし、そういった世界観なので、渡世の仁義などヤクザものが好きなひとにもおすすめできる作品である。
※その後、実際『梨泰院クラス』の感想記事でこの件について書きました
4.ジョンヒョクが魅力的すぎてつい見てしまう笑
余計なことを言わずにセリの話をひたすら聞いて、一言だけ自分の信念から来る言葉を放つ。また、セリの仕事については一切口を挟まず、励ましの言葉だけかけて自分は一歩ひいて見守る。これは中々男はできない。男として見習う点が多すぎ問題笑
ただでさえ、高身長でイケメンなのにここまで女心をわかっていて行動できるところがマジでカッコいい!いやこうした方がいいというのは日本のぼくを含む男性陣もわかっているんだよ、ホント。しかし、頭でわかっていても、つい余計なアドバイスを言ってしまったりするんだな、これが。こういうスマートな行動はやはり男としては見ていて憧れてしまう。あと寡黙なんだけど、よく泣くところも素晴らしい。言葉ではなく行動や表情で愛情を表現している。下手したらセリよりもジョンヒョクの方が泣いているのではないか。あの男泣きにはついついもらい泣きしてしまう。またセリのことが大好き過ぎて、部下がハグしようとしたところを止めるところとかもかわいい。
ジョンヒョクに限らず、ク・スンジュンというセリの家の次男から詐欺を働いて北朝鮮に逃げてきた男がいるんだけど、最初のうちはいけ好かない男なんだけど、物語が進むにつれてジョンヒョクとは違うタイプのいい男というのがわかってくる。彼の物語もまた悲哀が詰まっていて泣けるのでぜひ注目して見て欲しい。あとク・スンジュンの紳士的な在り方も見習うところ多いなと思う。とにかく男性キャラの魅力がぱない。
リ・ジョンヒョクもク・スンジュンも男が好きになる男だと思う。ふたりともカッコいいのでぜひ見て欲しい。そして彼らからぼくらも学ぼうではないか笑
てな感じでした。特に韓国文化に興味ないおっさんでもここまで楽しめちゃうので、まだ見てないよって方にはぜひおすすめの作品です!
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