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映画の感想 怒りの葡萄

あらすじ

1930年代のアメリカ合衆国オクラホマが舞台。大恐慌、台頭する資本主義、深刻化する砂嵐。それらの影響で、慣れ住んだオクラホマを捨てて希望の地カリフォルニアへ向かうジョードファミリーの話です。
原作者のジョン・スタインベックはこの作品によりピュリッツァー賞を受賞し、後にノーベル文学賞も受賞しています。
この映画の素晴らしい点を3つご紹介します。

1)セリフ

いくつも印象に残るセリフがありました。最も印象に残るのは、ラストシーンでのママ・ジョードのセリフです。

『女は男より変わり身が上手だ。
男は物事にすぐとらわれる。
人の生死、農場の事、何にでもすぐとらわれる。
逆に女は川のようにながれている。
滝もあれば渦もある。
けど流れが止まったりしない。
それが女なんだ。』

映画「怒りの葡萄」より

オクラホマを出る時に夢見たカリフォルニアでは、全く異なる現実が待ち受けていました。それらを受け止めながらも、とらわれずに生き続けていく。そんな力強さがセリフからにじみ出ていました。なんとなく「風と共に去りぬ」のスカーレットにも通じる力強さです。
ところで、川のながれって、鴨長明や秋元康なども取り上げるように、人生や生き方の比喩表現としてよく使われますね。

2)ジョーン・ダーウェル

ママ・ジョード役でアカデミー賞助演女優賞を受賞したジェーン・ダーウェルの演技が素晴らしいです。はまり役という言葉がピッタリです。
いわゆる「おっかさん」的なお母さん役です。カリフォルニアへ向かう道中の困難を経ても、カリフォルニアが夢見た理想郷と違っても、彼女が大丈夫と言えば大丈夫な気になります。自分の家族だけでなく、お腹が空いている子供たちにご飯を分けてあげる慈悲深さも素晴らしいです。無鉄砲なところもある主人公のトムも、ママのことが大好きなことがひしひしと伝わってきます。日本人でキャスティングするなら草笛光子さんか樹木希林さんあたりでしょうか。

3)音楽

作品で使用されている、どこかで耳にしたことのある曲は「赤い河の谷間(Red River Valley)」です。

原曲は白人青年とインディアンの娘の恋心を歌った曲です。本作中ではインストゥルメンタル曲を効果的に使用していました。曲のタイトルであるRed Riverがオクラホマを流れている河なので、この曲が選ばれたのかもしれません。ノスタルジー感漂うこの曲を耳にすると、ママと別れてひとり旅立っていくトムの姿を思い出さずにはいられません。

こんな人におススメ

家族愛、正義、勇気などを感じたい人におススメの作品です。日々の忙しさに流されて、いつのまにか熱い心をなくしている人も、この作品を鑑賞して人間らしい心とは何かを考えてみる機会にしてみるといいかもしれません。


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