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口ずさむ 歌も寂しき 食事時

鯛と秋刀魚

 いつも食料品を買うスーパーは、前身が魚屋だったらしく鮮魚売り場が充実している。鯛、いさき、鯖など安い魚があれば買って3枚に下ろしてもらう。刺身用に切り身にしたものも豊富で、縞鯵なんてそこらのスーパーでは見かけない魚も切り身にして置いてある。同じ白身でも、縞鯵は鯛に比べると少々値が張るが、歯応えと旨みが勝るのでついつい買ってしまっていた。しかし、このところ一段と値が上がって手が出なくなった。

 縞鯵がなぜこんなに高くなったのか、疑問に思っていたらNHKのデジタルニュースが答えを教えてくれた。「〜日本人は金払えない〜アジアの胃袋に向かう高級魚」なる見出しのニュースによると、中国やアジアの富裕層が日本の魚の美味しさを知ったことが原因だとしている。福岡の魚市場では、中国人の仲買人が、玄界灘で採れたノドグロ、マナガツオなどの高級魚を次々に高値で競り落としていると言う。

 魚と言えば高級魚ばかりでなく、秋の食卓に欠かせなかった秋刀魚が高くなり、ここ数年は我が家の食卓にも登る回数がめっきり減った。秋刀魚の高値は不漁が原因と言われているが、その背景には気候変動による漁場の変化と、中国漁船による乱獲があるらしい。前門の虎、後門の狼ではないが、安い魚も高い魚も魚屋の店先から消えるなんて事態になったら、酒の肴だけでなく夕食のおかずにすら困ってしまう。歌の文句じゃないが、「どうすりゃいいのさ、この私」って気分になってしまう。

 朝食にだって困っている。朝食の定番と言えば、トーストとハムエッグだが、材料はどれも値上がりしている。特にエッグの値上がりは、この1年で2〜3倍と際立っている。エッグ即ち、鶏卵の値上がりは輸入飼料の価格上昇によるところもあるが、鳥インフルエンザの感染拡大に伴う殺処分で、生産量が減ったことの影響が大きいようだ。朝食も夕食も食べたいものを食べたいだけ食べれる時代が、終わりを告げようとしているのだろうか。これでは、「なじかわ知らねど、心わびて」だ。

                           (2023.05.20)

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