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ポケモンと コラボレーション 松林図

松林図屏風の前に現れたポケモン

 お正月に東京国立博物館で決まって展示される長谷川等伯の国宝「松林図屏風」を観に行った。59年前、第1回東京オリンピックに併せて催された日本国宝展で初めて松林図屏風を観て強い印象を受けて以来、この絵を観るのは今回で4回目になる。日本の墨絵の最高傑作とも称されるだけあって、観るたびに絵の持つ深み若しくは、幽玄さが増して行くような気がする。

 鑑賞を終え大満足で正面の大階段を降りている際に目に止まった「日本の美術と遊ぶ体験展示」との表示に釣られて1階玄関横の展示室に入ってみた。そこに松林図屏風の高精細複製品と、その他3つの屏風の複製品が展示されていた。それぞれに春夏秋冬が割り振られており、松林図屏風は冬の役回りであった。各屏風にプロジェクションマッピングで興趣を増すような動きを与える試みがされていた。松林図屏風には雪が降り、やがて松の枝に雪が積もり、夜が明け日が登るとともに雪が解けて行く画像が投影されていた。

 邪道といえば邪道だが、率直に面白いと感じた。中でも松林図屏風は、プロジェクションマッピングとの相性が良いのか、絵に新たな命が吹き込まれたように感じた。世の中、VRだARだメタバースだと新たな技術を使った新しい映像表現が次々と登場している。現実の景色の中にスマホを通してキャラクターが登場するポケモンG OはARの走りだった。ポケモンGOを初めて見た時には、どうなっているんだと理解に苦しんだが、プロジェクションマッピングなら年寄りも直感的に理解できる。

 メタバースは仮想空間をアバターなる分身が動き回るという。自分のアバターが仮想空間に作られた会議室で会議に参加したり、仮想空間に現れる外国の街並みを歩いたりするのだそうだ。「夢現つ」ではないが、何処までが現実で、何処からがバーチャルか区別がつかなくならないのだろうか。安土桃山時代の国宝を観に行って、思わぬ展示を観せられ、迷宮に誘われてしまったようだ。

                               (2023.01.14)

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