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深川めし 食って味わう 江戸文化

永代橋越しに眺める深川(江戸時代に描かれた屏風絵の一部を模写した)

 江東区白河の「釜匠」の2階で深川めしを食べている。丼に盛られた炊き込みご飯は、ふっくらとしたアサリの身が沢山入っていて、とても美味しい。江戸時代に深川の漁師や職人は、こんな美味しいものを食べていたのかと驚かされる。先程まで、深川江戸資料館の中に復元されたの江戸時代の深川の町並を歩いていたので、こうして深川めしを食べていると、江戸の職人になったような気分がしてくる。

 深川江戸資料館は、時代小説愛好家なら誰しも訪問したい場所の1つのようである。地下1階、地上1階を吹き抜けた大きな空間に、江戸の町並みが復元されている。山本周五郎、池波正太郎、平岩弓枝等の時代小説に登場する人物が歩いてくるのではと思わせる見事な出来である。通り面した八百屋と米屋の店先には商品が並んでいる。その裏にある棒手振りや木挽き職人の住む長屋には商売道具が置いてある。八百屋と米屋の並ぶ通りの向かい側には肥料商の大店と蔵が建っており、その道に沿って進むと船の浮かぶ河岸に突き当たる。その河岸に建つ2軒の船宿には、丁髷を結った客が今にも出てきそうな雰囲気が漂っている。

 山本一力に、京都伏見の酒を扱う1問屋の商いを通して、江戸商人の矜持を綴った短編「節分かれ」がある。物語の始めに描かれた永代橋から隅田川沿の佐賀町河岸の風情に興味が湧いた。そこで、ウエッブで当時の町の様子を探っいる内に、深川江戸資料館なるものがあることが分かった。私の興味にピッタリの施設だと思い、熱中症が心配な天候であったが、麦わら帽子を被り、冷たい水を入れたポットを持って出掛けてきたという訳だ。

 思い切って来てよかった。資料館では江戸の町の雰囲気を肌で感じることができたし、ここ「釜匠」では江戸の庶民が食べていた飯にもありつけた。これで、時代小説をこれまで以上に楽しめるに違いない。
 目の前の深川めしは働く人の食い物だっただけに、老人には量が多過ぎて1/3ほど残してしまった。店の人に一言謝ってから帰るとしよう。

(2023.07.27)

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