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石と

重いなと思ったら大きな石を抱えていた
石は静かにあたたかく
私の腕の中でゆっくりと呼吸する
ツバメたちが耳元で
底なしだから気をつけなさいと囁く
導くのは金色の脚をした少年たち
天鵞絨垂れ下がる天岩戸で
太古の蟲が果実を貪る
私と石は心を決める
やみいろの長い髪をした創造主は
石を見失わないようにと
赤酸塊の王冠を差し出す
煌々と灯される火よ
滴る血よ水よ
どこから騙されてたのかわかっているのかと
白く光る蛇が云う
全部嘘で偽であっても良いのだと
石は低く歌うのだった
私は少し眠くなって
石の傍らで丸くなる
起きたらきっと春だろうと
石の温もりとともに目を閉じる

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