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うしろのはなし

私が優しかったころの話をしようか

こんなふうに牙が生えていなかったころ
穴を開けずに舐めとることができた

こんなふうに爪が尖っていなかったころ
柔らかく撫でることができた

すべて過去
うつくしいと思ったものは
すべて後方にある

きみは
私が優しかったころを覚えていると
言っていた

やがて忘れてしまうだろうぜんぶ
ぜんぶを抱きしめて眠る
寝床は寒く
きみはあたたかく

熱い血の匂いがする

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