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#葬式に呼んでください

「白よりも黒が似合うよ絶対黒だ」お前と買ったTシャツを干す

喪服とは言っても下着は自由でしょう「いちばんえっちでかわいいやつを」

霊感があるって話は本当だけど信じないなら確かめに来て

「友だち」という役名を最期まで演じてやるからなんか奢れよ

さいごまで僕はあなたの脇役ですが、最終回は大ゴマキメる


適当に入った中華料理屋の650円の唐揚げ黒酢ランチがお前との最後の晩餐になるなんて思わなかったし、あの日着てたのがもう好きじゃないバンドの10年前のTシャツなのも、もうちょっと金をかけたかった贅沢しとくべきだったとは思うけど、お前の前髪に白髪が混じってること、目の色が黒というより灰がかった茶であること、俺の食べる速度に合わせてくれていること、白いごはんを食べる時の頬のふくらみ、色んなことに不思議と気がつく日だったのを覚えている。
電車に乗る直前に烏龍茶のペットボトルを押し付けて来て、お前それ重いからだろって笑って、大学生みたいな会話だったけどもう大学生ではないし、今更踏み込めないまま、お前は結婚して、俺は引っ越して、年賀状のやり取りだけになったけど、お前の癖字を見る度に、もしも俺の口がもうちょっと情緒的なことを口走っていたら、もうちょっと近くに行けたのかなって思うけど、そうなることが正解なのか不正解なのかわからない。
今は選んでしまった答えを生きている。

#短歌 #葬式に呼んでください #BL短歌 #創作

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