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てんせん

点線をなぞっていって
やがて君にたどりつく
君の手のひらをつたって
点線はのびていく
君は目を閉じて歌を歌っている
そういえば前にもこんなことがあった
君はいつも知らない歌を歌っている
君の輪郭をすべてなぞったら
それはしずかな湖になった
湖のふちにすわって
君の歌を聴く
歌は体内をじゅんぐり巡り
僕はどうやら孕んだようだ
水に浸した体は軽く
ようやく別のいきものに
なれる日が来る
君は少し目を開けて
朝だ、と小さく呟いた
点線は世界とまじわる
うつくしい鹿たちが踊る
花は朽ちて種が弾ける
手を繋いでみる
湖はすこし波打ち
いにしえの竜がのそのそと起き上がる
僕は君の歌をまねしてみる
声は少し響いてすぐにきえる
朝だ

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