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夜中図書室

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おはなし
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#ホラー小説

◆小説◆映ずる

◆小説◆映ずる

Sが鏡に映らないのに気がついたのは、夏休み前、研究棟旧館のひとけのない階段の踊り場の大きな鏡の前だった。思わず「あ」と口に出し、鏡とSを何度も見る私に、Sは「体質なんだよね」と恥ずかしそうに笑って見せた。
「気がつく人はたまにしかいない。というか、ほぼいない。中学の時に近所に住んでた兄ちゃんと、高校の時の教育実習の先生くらいかな」
「家族は」
「気づいてないよ」
「大学にもいないの?」
「貴方が初

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