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夜中詩

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こぼれ落ちるのをすくってゼラチンで固めたやつ
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2019年11月の記事一覧

ばんさんかいさんばんかいばん

ばんさんかいさんばんかいばん

怒りの鮮度がいいうちに
塩コショウして火にかける

糖度の高い夢ならば
熱い珈琲で飲み込むしかない

腐りかけの情念を煮込み
炊きたてのご飯にかける

刻んだ劣情と砕いた嫉妬を混ぜ合わせ
挽肉と一緒に肉団子にする

優しさを撹拌し
クリーム状に

スライスした嘘を薄く並べて
オーブンから出した愛を載せる

食べる前にお祈りを
うつくしいマナーを
卓上に喜びと微笑みを
テーブ

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ある箱の話

ある箱の話

一人でいるうちに
体の輪郭は緩やかに溶けだし
部屋と一体化してしまった

私と一体化した部屋が売りに出される
不動産屋の広告を見た青年がやってくる

青年は長く眠るひとだった
夕方になってから外に行く

私はカップラーメンの残り香を吸い込みながら過ごす
毎日はとても平板で幸福だった

ある日青年は芍薬の花束を持って帰ってきた
花をさした硝子が私の体を照らす
青年はわあわあと泣き出す
湧き出

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