僕らはみんな高倉花梨に癒されたいんだ

前回の記事では都合上省略したんだけど、遙か2は主人公の人気が高い。高いったら高い。

高倉花梨

え?遙かシリーズ不動の人気主人公は望美様こと3主人公じゃないのかって?したらTwitterで「高倉花梨」でワード検索してみるといい。「花梨…尊い…」とか「花梨…生きる希望…」とか毎日呟いてる怪しいアカウントが大量に見つかるから。

そんな2主人公の高倉花梨ちゃんのスペックはこちら!

・高校一年生、身長160㎝

・象徴物は蒲公英(たんぽぽ)

・「困難な状況に陥っても、それを乗り越えようと精一杯努力する芯の強さをもっています」「どんな相手に対してもまっすぐ接しようと心がける誠実な性格です」(メモリアルブックより)

・ショートヘアにミニスカート、足元はワークブーツという活動的な服装

可愛い

後はTwitterで拾ったところによれば、

・健気

・心優しい

・頑張り屋

・尊い

・メンタル強靭すぎ、もはや女神では?

・俺の人生を狂わせた女

etc...

みんなでっかい感情高倉花梨に寄せすぎじゃない?

八葉もびっくりだよ。

え?お前は寄せてないのかって?

馬鹿野郎!いっつもクソデカ感情のやり場をなくして悶えてるに決まってんだろ!

それどころかそういうの見て「フフフ…誰も高倉花梨の真価を知らない…本当の高倉花梨を知ってるのは私だけ…」みたいに心の中でマウントとってるからね。とはいえみんなが高倉花梨の真の魅力を知らないままでいるのはかわいそうなので、これから説明していきたいと思います。我こそは!と思う方はマウント取り返しにくるために正座して読んでください。



高倉花梨がここまでプレイヤーの崇拝を集める理由の一つに、その他の登場人物がクソ過ぎるというところは大いにあると思う。序盤わけもわからず異世界に飛ばされた花梨さんを取り巻く人間たちは、

・なんかよくわからないけど謎の期待を寄せてくる怪しい仮面野郎

・別にこっちが名乗ったわけでもないのに謎に疑ってくるイケメン共

・上手くいかないことがあるととりあえずこっちを責めてくるクソ生意気な10歳児

のクソ過ぎる三大勢力である。マジで幼女だけが癒し。まあまあ幼女も頼りないっちゃ頼りないけど、10歳だからしょうがないよネ!(棚に上げていくスタイル)

というわけで序盤プレイヤーは周りの塩対応にゴリゴリメンタルを削られながらプレイすることになる。その中で健気にも元の世界に帰るべく頑張る花梨さんはめっちゃ頼もしく見えるのだ。

とはいえ、花梨さんはただ健気に頑張るだけの人ではない。そこがわかるのが序盤のこの会話。


深苑「存外、院のもとの神子の方が本物やもしれぬな。」
紫 「兄様、おやめください!神子様、申し訳ございません。私がうまくお話しできないばかりに…」
花梨「(紫姫がすごく気に病んでる)」

~選択肢~

①紫姫のせいじゃないし気にしてないよ
②いい気はしないけど仕方ないか


これは序盤八葉に龍神の神子であることを信じてもらえず、深苑に神子として力が足りないことを責められるシーン。対しての反応が上記の選択肢二つである。どちらを選んでも誰かしらの好感度は上がるので、どちらもいわゆる「捨て選択肢」ではない。

この会話からわかるのは、花梨さんが極めてストレスコントロール力が高いということだ。

花梨は深苑に責められても、落ち込む、しょげるなどのマイナス反応を示さない。というより、反応をしていないというのがより正確だ。彼女が反応したのはあくまで紫姫が落ち込んだという部分であって、深苑が責める内容に関してはおそらくどうとも思っていないのだ。

考えてみればそれは当然のことで、突然飛ばされたばかりの花梨にとって「お前の力が足りないから」と言われたところで「知るかよ」以外の反応はないだろう。実際のところ彼女にはそれが妥当かどうかを判断する知識も方法もないわけであって、この場合は「受け流す」のが正解なのである。

①の選択肢はおそらく紫姫の心境に寄り添うもの。②の選択肢は、それを判断する術もないけれど、とりあえず言われているならそうなのだろうとフラットに受け止めるもの。どちらにせよ、花梨さんは極めて冷静で、自分のメンタルを守ることに長けているのがわかる。

似たような選択肢は他にもある。

同じく序盤、朝に深苑の姿が見当たらないという場面。兄の考えがわからないとこぼす紫姫にかける言葉が以下の選択肢だ。


①でも深苑くんも頑張ってくれてるんだとおもうんだ
②深苑くんって、何か別のこと考えてそうだよね
③私きらわれてるのかなぁ…


この場合好感度が上がるのは①と②の選択肢である。好感度が上がる選択肢をストーリー上の正当なセリフに該当すると仮定すると、①のように兄のことを想う紫姫に寄り添う言動をする、②もしくは冷静に状態を考察することが花梨さんの選択肢として妥当なのであって、③のように過度に感情的になることは選択肢としてよろしくないのだと思われる(実際、八葉に「感情的になるなよ」とか言われる)。

ネオロマンスのゲームは基本的に主人公に過度の人格を設定しないもので、選ぶ選択肢によってプレイヤーに寄り添った性格が決まっていくものである。とはいえ、どのような選択肢を取ることで攻略が出来るか、そもそもの選択肢の内容によってある程度の性格骨子は定まっている。それから察するに、花梨さんは極めてストレスコントロール能力が高く、冷静で、頭の回転が速い人だ。

花梨さんが冷静な人であることは他の場面からも読み取れる。


「誰が悪いとか言っても始まらないと思うよ」
「誰かを責めるより、呪詛のことをどうにかしないと」
「今は呪詛をどうするか考えましょう」


全て、話が本題から逸れて揉め始めたときのセリフである。花梨さん、とにかく話を戻すパターンのセリフが多い。並外れた仲裁力だ。

前述した通り、今回のメンツは仲が悪いし尖った性格の人(マイルドな表現)が多いので、とにかく揉める。その時に話を戻すのは大体花梨さんだ。仲裁というのはなかなか難しいもので、何が問題なのか、何が本題なのかを瞬時に見極め、その上で言葉を選ぶ必要がある。そこにはかなりの頭の回転が求められるのだ。

遙かなる時空の中で2は末法の世が舞台で、誰もが鬱屈した思いを抱いており、それを突如現れた、世界を救ってくれるかもしれない神子にぶつけてくる。それは彼女自身が異世界からの来訪者でなんのしがらみもなく、なおかつ親しみやすい少女だからだろう。その様々にぶつけられる言葉の中から、花梨さんは自分が負うべき言葉と、負うべきではない言葉を的確に見分けて反応を返しているのだ。自分を慕って頼りにしている紫姫の言葉は大事に受け止め、根拠のない憤りをぶつけてくる深苑の言葉はさらりと受け流す。アクラムは怪しいけれど、何か情報を握っているらしいから考える。怪しいけれど、敵に回しすぎるのもよくないからきちんと礼を言う。目的のために揉める時間はもったいないのできちんと話をもどす。

その上で、ストーリーが進み、八葉たちと絆が深まってくると、冷静に受け流すばかりではなく、きちんと彼らの嘆きを受け止め、励ますことも出来る。彼女は実に人との距離感を図るのが上手く、コミュニケーション能力が高いのだ。ただ、それは彼女が計算高いということを意味しない。彼女は心優しく、純粋で、その上で非常に立ち回りが上手なのだ。なんだ女神か。

実際、彼女のこの性格はかなりこのゲームの快適さに一役買っていると思う。主人公が落ち込むと、それにひきずられてプレイヤーもしんどくなる。花梨さんが常にフラットな感情で罵倒されても引きずられないから、プレイヤーもしんどくならずにプレイできているのだ。

この現代社会において、自分一人で自分の機嫌が取れる人はなかなかいない。いろんな人が自分の気持ちを他者にぶつけることで何とか社会生活を送っている。けれどそれをぶつけられる側は消耗するし、「なんで私が」と思うことはいっぱいある。その中で花梨さんのように「負うべき言葉を負い、自分のせいではない言葉は流す」というスキルが生きてくるのだ。我々は花梨さんからコミュニケーションスキルを学ぶべきなのである。

と同時に、私達も自分の気持ちを誰かにぶつけたい、という気持ちを持っている。より正確に言えば、自分の苦しみを誰かに受け止めてほしいのだ。あらゆる人の苦しみを受け、それでもなおくじけず目的に向かって進む花梨さんの姿に、私たちはその理想の「誰か」を見る。生きる希望を見出すのだ。

冷静で、頭の回転が速くて、それでいて心優しくて。ストレスを抱えて日々生きる私たちは、そんな蒲公英のごとき人に癒されたいと常々願っている。少なくとも、私は。



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