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ダダイズムとは その1

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ネオダダやヌーヴォー・レアリスムの元になったダダイズムとはどういうものでしょうか。

18世紀後半、市民(ブルジョワジー)によるフランス革命が絶対王政を崩し、産業革命が世界を(ヨーロッパを)席巻し、世の中は真新しい社会に生まれ変わるはずでした。しかしその約100年後、20世紀初頭に第一次世界大戦が勃発します。フランス革命後、資本主義社会になり王族に変わり新しくブルジョワジーが政治的・経済的に市民(シトワイアン-一般的市民)を支配していました。そんな世の中で第一次世界大戦が始まり、それをきっかけに市民(シトワイアン)が立ち上がったのです。文明化の仮面を被って支配し苦しめるブルジョワジーに立ち向かい、それを体現するように全ての古い価値観に抗い、新しい価値観を持った社会を築き上げようとしたのです。

この社会的な出来事は当然の様にアートにも強く影響を及ぼします。既存の価値観の放棄や戦争による社会不安により、全く新しいものが世の中において必要とされる頃、前衛美術(アバンギャルドアート)が生まれました。今までのアートではなく、もっと政治的でイデオロギーの含まれる、そして視覚的にも今までとはまるで違った作品が出てきたのです(実際には第一次世界大戦前からあるキュビズムや抽象芸術も含まれます)。既存の価値観を備える古いアートへの大いなる反抗でした。その頃のアバンギャルドアートからダダイズムも生まれました。

そしてその前後、19世紀後半からにわかにアーティスト及びアート作品が神格化され始めてもいました。ダダイズムの始まる1910年代頃には、それがピークに達していたようです。私の個人的見解ではウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動も大きな原因の一つだと思っています。卓越した技を駆使して作られた工芸品(クラフト)やデザイン(絵画ではないという意味の)は芸術品って言っていいんじゃないかっていう運動です。この運動によって、上手にできた工芸品やデザインは芸術品と名を変え、高価で売買されるようになりました。

それに加えて、少し前のロマン主義や印象派と違い、キュビズムや抽象芸術のような一見して”わけがわからない作品”は見ている人たちに、「こんなわけがわからないものを作る人たちは、私たちがわからないようなすごいことをしている賢い人たちに違いない」と印象付けたのではないでしょうか。

我々市民の代表となって発言し、新しいイデオロギーを世に発信し、高価な上に賢い人が作っているとなれば、アートが神格化される道を辿ってしまったのは必然だったのかもしれません。神格化されることで様々な面で得をするアーティストやその周りの人がたくさん出てきました。

アバンギャルドアートから出てきたアンチ・アート(反芸術)の思想を持ち、アートの神格化への反抗として出てきたのがダダイズムです。ダダイズムにおいては政治的側面よりも特にイデオロギーの面が重要視され(リヒャルト・ヒュルゼンベックのベルリン・ダダのように政治的側面-特に共産主義化-を多分に含むダダイズムもあります)、既存のアートを嘲笑い、そして結果的に「アートとは何か」を問うような作品が作られました。

その2へつづく…