【250字レビュー】かか

読み進めるうちに、しわがれた祈りの声のようなものがじりじりと迫ってくる。擦り切れるような痛みが充満した家。主人公は母親を産み直したいと願う。これは愛情で固められた苦しい関係に対する最大の叫びなのかもしれない。けれど結局母親はそのまま生き続け、ジリジリとした不快さがただ続く。最後に漂うのは悲しみでも孤独でもない、主人公が自分の存在を感じるのは痛みの中だけ。痛みから解放されたいけれど、痛みがなければ存在できない閉塞。存在させられることの苦しみ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?