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時々刻々|#3 被用者であれば社会保険に適用されるべきだと思う

年金時代編集長

わたしには母がいるのですが、一人暮らしをしていましたが、要介護状態(要介護5)となり、いまは特別養護老人ホームに入所しています。母は、公的年金を受給していますが、年金で介護保険による自己負担分(1割)を賄っています。

おかげで、わたしが介護離職することもなく、また、母の介護費用を負担することもなく、母は生活しています。ときどき、病院に行くときなどは、家族(かみさんも協力してくれます。)が連れて行かなければならないので、わたしが会社を休んで、母を病院に連れて行ったりすることはあります(そんなときは会社の介護休暇制度を利用しています)。

母は、現役時代はちゃんと年金制度(国民年金、厚生年金に加入し、未納期間はありませんでした)に加入していましたし、介護が必要な状態になったいま、年金給付の範囲内で介護費用の自己負担分を支払っています。仮に、母が国民年金のみに40年間加入していたとしても、満額の基礎年金で介護保険のいまの母の自己負担分を賄うことができます。

そう考えますと、社会保険として、公的年金に加入し負担すべき保険料をきっちり払っていれば、介護状態になっても、必要な介護サービスを受け、その費用(自己負担分)もきっちり支払えるということですから、公的年金も介護保険も母が直面している長生きによる経済的なリスクと介護リスクに対して、しっかり整合的に機能していると実感しています。

いま、年金制度改正の議論では適用拡大もテーマのひとつになっています。人は老後の生活のことを考えて貯えをしますが、支払われる給料からは本人負担分の社会保険料が天引きされ、加えて給料とは別に、事業主も同額の社会保険料を負担しています。

社会保険料を負担すると、手取りの給料が減ること憂慮する人がいますが、将来の備えをするわけですから、それは致し方ないことです。しかし、その備えは社会保険という民間の金融商品とは比べものにならないくらい有利なしくみですから、活用しない手はありません。

一方、事業主にとっては、適用拡大は社会保険料の負担が増えるだけで、給付を受けることはできません。しかし、そこは事業主の義務を果たし、人材募集のときに「社会保険完備」と胸を張って表明してメリットを享受していただきたいと思います。

<了>

年金時代編集長(ねんきんじだいへんしゅうちょう)
1991年(株)社会保険研究所入社。『月刊年金時代』編集・記者を担当。2017年4月ウェブサイト『年金時代』を開設、編集長に就任。このほか『年金マニュアルシート』(著者:三宅明彦社労士)などの年金相談ツールの開発・編集・発行に携わる。






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