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「純文学・文芸評論」関連書のレビュー

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主に「文学・文芸評論」関係書のレビューを紹介しますが、分類は目安に過ぎず、「ミステリ・SF」系の作品も含みます。
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2024年2月の記事一覧

岸政彦 『断片的なものの社会学』 : ラノベ的な「ライト学問」

書評:岸政彦『断片的なものの社会学』(朝日出版社・2015年刊) 本書は「紀伊國屋じんぶん大…

年間読書人
8か月前
34

小津安二郎監督 『風の中の牝雞』 : 「批評的深読み」 とは何か。

映画評:小津安二郎監督『風の中の牝雞』(1948年・モノクロ作品) 小津安二郎の戦後第2作目…

年間読書人
8か月前
11

日和聡子・金井田英津子 『瓦経』 : 頬をかすめた微風

書評:日和聡子(著)・金井田英津子(挿絵)『瓦経』(岩波書店) 本書は、岩波書店が刊行してい…

年間読書人
9か月前
7

伊藤潤一郎 『「誰でもよいあなた」へ 投壜通信』 : 今どきの柔な「哲学書」

書評:伊藤潤一郎『「誰でもよいあなた」へ 投壜通信』(講談社) 本書の著者は、フランスの…

年間読書人
9か月前
17

カート・ヴォネガット・ジュニア 『猫のゆりかご』 : 猫の不在

書評:カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』(ハヤカワ文庫) 最初に言っておくと…

年間読書人
9か月前
17

中井英夫論 「眠り男の迷宮・迷宮の夢」 : 『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』月報 …

 【旧稿再録:初出は、2006年1月17日刊行『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』。2005年後半に…

年間読書人
9か月前
11

中井英夫 『月蝕領映画館』「中井英夫全集12」 : 反世界からの映画批評

書評:『中井英夫全集[12]月蝕領映画館』(創元ライブラリ・2006年) 『月蝕領映画館』は、1984年に大和書房から初版単行本が刊行されたものの、その後、再刊や文庫化もなく、中井英夫の主だった作品(著書)を収めた第二次「中井英夫作品集」(三一書房・全10巻+別巻1)にも収録されないままだったのが、「創元ライブラリ」版「中井英夫全集」において初めて収録され、いわば「文庫化」も成った著作である(なお、三一書房は、1969年に1巻本の『中井英夫作品集』を刊行しているので、こちら

黒柳徹子 『窓ぎわのトットちゃん』 : トモエ学園の「卒業生」として

書評:黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(1981年初刊・1984年講談社文庫) 昨年末に公開され…

年間読書人
9か月前
19

ロベルト・ヴィーネ監督 『カリガリ博士』 : 『カリガリ博士』 と 中井英夫『月蝕領…

映画評:ロベルト・ヴィーネ監督『カリガリ博士』(1920年・ドイツ映画・モノクロサイレント)…

年間読書人
9か月前
15

蓮實重彦 『監督 小津安二郎』 : 「説話論的」とは何か?

書評:蓮實重彦『監督 小津安二郎』(ちくま学芸文庫) 私が読んだのは「ちくま学芸文庫」版…

年間読書人
9か月前
27

映画 『オーソン・ウェルズのフェイク』 : あなたに 真贋が見抜けるのか?

映画評:オーソン・ウェルズ監督『オーソン・ウェルズのフェイク』(1973年、イラン・フラン…

年間読書人
9か月前
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岸本佐知子 『なんらかの事情』 : 常識的思考パターンからの自由

書評:岸本佐知子『なんらかの事情』(ちくま文庫) 2012年刊行の、岸本佐知子の第3エッセイ…

年間読書人
9か月前
15

ロベール・ブレッソン監督 『田舎司祭の日記』 : 神の沈黙と受肉

映画評:ロベール・ブレッソン監督『田舎司祭の日記』(1950年・フランス映画) 『ジャンヌ・…

年間読書人
9か月前
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松浦寿輝 『半島』 : 繊細さの弱み

書評:松浦寿輝『半島』(文春文庫→講談社文芸文庫) すっかり疎遠ではあったものの、松浦寿輝とは古いつきあいだ。と言っても、むろん知り合いだというわけではなく、読者としては古いのだが、長らく読んでいなかったということである。 松浦寿輝を初めて読んだのは、1993年のことだから、もう30年も前のことだ。 「Wikipedia」を確認してみると、松浦の第1著作は詩集『ウサギのダンス』(1982年)。そして、私が初めて読んだ松浦の著作は、第2評論集の『スローモーション』(1987