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「純文学・文芸評論」関連書のレビュー

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主に「文学・文芸評論」関係書のレビューを紹介しますが、分類は目安に過ぎず、「ミステリ・SF」系の作品も含みます。
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記事一覧

ヘルベルト・ローゼンドルファー 『廃墟建築家』 : ゴシックではなくバロック

書評:ヘルベルト・ローゼンドルファー『廃墟建築家』(国書刊行会) よそなら絶対出さないよ…

年間読書人
11日前
17

宮内悠介 『暗号の子』 : つながるテクノロジーの快楽と不快

書評:宮内悠介『暗号の子』(講談社) 本書はテクノロジーによって変容していく、私たちの世…

年間読書人
2週間前
15

第四波フェミニズムの嫡子・北村紗衣 : 『現代思想 2020年3月臨時増刊号〈総特集〉フ…

『現代思想 2020年3月臨時増刊号〈総特集〉フェミニズムの現在』(青土社)を読了したので、今…

年間読書人
2週間前
21

ファンも認める〈いけ好かない女〉北村紗衣 : 「性格の多様性」って何?

ものすごく面白い「note」記事を見つけたので、皆さんにもぜひ読んでほしいと思い、ご紹介させ…

年間読書人
3週間前
38

野﨑まど 『小説』 : 「小説」を読む意味とは?

書評:野﨑まど『小説』(講談社) 小説のタイトルが、そのものズバリ『小説』なのでは、いっ…

年間読書人
4週間前
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黒澤明監督 『赤ひげ』 : 黒澤明のヒューマニズムと過剰性

映画評:黒澤明監督『赤ひげ』(1965年) 山本周五郎の時代小説『赤ひげ診療譚』を原作とした…

年間読書人
1か月前
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木澤佐登志 『終わるまではすべてが永遠 崩壊を巡るいくつかの欠片』 : その尊厳に賭けて抵抗せよ。

書評:木澤佐登志『終わるまではすべてが永遠 崩壊を巡るいくつかの欠片』(青土社) この世界は病んでいる。一一そう書いても、異論を唱える人など、ほとんどいないのではないだろうか。 他人のことなど一切顧みず、自分の社会的な成功と富の蓄積しか考えていないような人間が、そのまま「成功者」として賛嘆され、競争社会からこぼれ落ちた人たちは、どこか見えない場所へと遺棄される。たまに、言い訳のようにそういう人たちに光が当てられても、私たちは「可哀想に」と感動消費したり、それをもっともらし

ちをかくしか北村紗衣と 九段理江の『しをかくうま』

書評:九段理江『しをかくうま』(文藝春秋) 2024年に『東京都同情塔』で、第170回芥川賞受…

年間読書人
1か月前
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ロラン・バルト 『神話作用』 : 「神話」とは、肯定的に思える〈まやかし〉

書評:ロラン・バルト『神話作用』(現代思潮新社) かつて「難解」の代名詞でもあった、フラ…

年間読書人
1か月前
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北村紗衣読者には薦める勿れ : 施川ユウキ 『バーナード嬢曰く。』 第7巻

書評:施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』第7巻(一迅社・REXコミックス) 本巻の表紙を見て…

年間読書人
1か月前
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韓松 『無限病院』 : 異形の「三部作」大作

書評:韓松『無限病院』(早川書房) ちょっと騙された感があるけれども、たしかに「異様に濃…

年間読書人
1か月前
16

酒見賢一 『中国雑話 中国的思想』 : 中国人的思考と日本人的思考

書評:酒見賢一『中国雑話 中国的思想』(文春新書・2007年) 酒見賢一が若くして急逝したの…

年間読書人
1か月前
38

松田いりの 『ハイパーたいくつ』 : 「筆力」だけはある。

書評:松田いりの『ハイパーたいくつ』(河出書房新社) 河出書房新社が主催する公募小説新人…

年間読書人
2か月前
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ジャン=リュック・ゴダール監督 『男性・女性』 : ゴダールという「解けない謎」

映画評:ジャン=リュック・ゴダール監督『男性・女性』(1966年、フランス・スウェーデン合作映画) ゴダールが、初期の作風から、「ベトナム反戦運動」などに連帯していく中期の「左翼転回」へと向かう、その起点となる作品だと言われているのが本作で、大雑把に言えば、たしかにその通りだ。 だが、そうだと言い切れないのは、ゴダールの作風というのは、最初から振れ幅が大きく、「初期の作風はこうだ」と簡単に言ってしまえるほど、単純でもなければ、わかりやすくもないものだからである。 だから、