【漫画感想】『裏バイト:逃亡禁止』
最近になってようやく『裏バイト:逃亡禁止』という漫画を全エピソード(執筆時点で128話まで)読んだのでその感想を書こうと思う。
致命的なネタバレ要素はほぼ無いが、読んだ上での単なる感想なので既読者向けの文章。
それとこれは完全にどうでもいいのだが、第1話でいきなり逃げてるのに「逃亡禁止」というサブタイがつくのかと思った。
・「裏バイト」という設定の巧みさ
タイトルでもあり主人公たちの職業でもある「裏バイト」はこの作品において多くの役割を果たしている。
主人公たちの目的は短期の高額アルバイトとしてワケアリの業務に従事し多額の報酬を受け取ることである。
ゆえに奇怪な現象が起こっても彼女たちは積極的にその原因を探ったり、事件を解決したりしようとしない。むしろ怪異と一切遭遇しないように気をつけていたりする。
ただ裏とは言えアルバイトである以上は給与を得るためには与えられた業務を行う必要があり、どう立ち回っても結局は適度に事件や怪異に巻き込まれてしまう。
仕事であることは主人公たちを怪異の中心から遠ざけつつも適度に事件に巻き込まれる必然性を担保してくれており、話のテンポがとても良くなっている。
また短期アルバイトであることが名探偵コナンのような「主人公の回りで事件起きすぎ問題」の解決にも一役買っている。
彼女たちは「アルバイトをしていたらたまたま怪奇現象が起こる場所で働いてしまう」のではなく「怪奇現象が起こる場所での求人を選んで働いている」ので毎回毎回別の場所で別の事件が起こることに論理的な必然性がある。
・特に面白かったエピソード
公式の人気投票でも2位を獲得していた「個人向け配送業」がお気に入り。
2位ではあるが1位がギャグ回だったので純粋なホラー回だけで見た場合は堂々の最恐エピソードと言っていい。
『鞄』の中身はなんなのか、なぜ『鞄』に惹き寄せられる人がいるのか、明確に中身を見たらヤバい物なのになぜ主人公の危機察知能力がまったくはたらかないのか、誰がなんの目的でこんな闇バイトを募集したのか、といったあらゆる謎が最後までさっぱりわからないのが非常に好みだった。
・最近の裏バイト
人気が出て長期の連載が安定してきたからなのか最初から既定の路線だったのかはわからないが、中盤以降から主人公が両親失踪の原因を探り始めたり、QというSCP財団みてえな機関の存在が示唆されたりと少しづつ長編になりそうな要素が出てきている。
個人的にはとにかく理不尽に致命的な怪異が暴れる短編ホラーとしての『裏バイト』が好きなのでこういう長編要素はなくていいと思っているのだが、マンネリを防ぐためのテコ入れとして必要なのかもしれない。
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