ねんどの素材解説2021(1)石紛粘土、モデルマジックなど
愛用ねんど素材など解説してみます。長めですので、数回に分けましょう。
折を見て、ねんど造型HOW TOの記事や動画も作るつもりです。
(1)石紛粘土、焼成粘土
所謂「フィギュア」の原形作成で最も使われている粘土。
’90年代前半「フル・スクラッチ」という言葉を耳にし始めた頃。模型専門誌ホビージャパンから「スーパーモデリングマニュアル」という造形のHOW TO本が刊行され、私もそれを参考に当時これらの粘土を試してみました。・・が、すぐに挫折しました 笑。
造型初体験の楽しさは味わえたものの、「盛って」は「削って」を毎日何週間も繰り返す「表面処理」という難敵に耐えられず・・。原型師の皆さんはこんな精密作業をこなされていると思うと、敬服します。
「石紛粘土」・・文字通り、石の粉の粘土。自然乾燥で、乾いた後は「削り」も楽です。でもいくら楽でも「盛り・削り」はもうやりたくない 笑。
「焼成粘土」・・オーブンで十数分焼いて固めるケミカル粘土。自然乾燥しないので、納得がいくまで存分に作業できます。が、表面処理作業は同じ。また「フタル酸エステル」という有毒成分に要注意です。
造型・制作そのものには挫折しましたが、印刷会社の若手広告カメラマンとして地元大分県中の風景をストック撮影などしていた時、「この風景に似合うキャラクターを作って、写真におさめたいなあ」という、拙「ねんど人形写真」のアイディアはこの時から浮かんでいました。
(2)モデルマジック
アメリカのクレヨラ社(クレヨンでお馴染み)から出ている、子供向け学習用軽量澱粉粘土。この粘土のおかげで初めて自分の「造型」が出来るようになりました。
2002年にフリーのカメラマンとして上京し、横浜で広告写真の仕事の傍ら自分独自の写真など模索してました(地方でカメラマンを務めるなら、何でも撮影できる何でも屋「デパート型」カメラマンが求められますが、中央だと逆に何かひとつ、他者が持っていない特技を持つ「専門店型」が重宝されます)。
フィギュア用粘土の挫折から10数年の、2008年。以前にはなかったインターネット、SNSの走り「Mixi」に「ねんど」のコミュニティがあり、そこでモデルマジックの作品を発見。ツヤのないマットな質感の第一印象は「写真に合う(使える)」でした。さっそく東急ハンズで入手。
・(1)の造型用粘土と違い「盛り・削り」が一切必要ない。基本的にねんどを丸めて「お団子」状態にすると、表面がとてもきれいな球になり、それを押したりつまんだりしながらの造型。見た目は和菓子に近く、マットな質感。
・とうもろこしの澱粉で出来ていて、子供が口に入れても大丈夫(さすがに食べるのはダメですよと)。
・練りながら(径5~7センチくらいだと)引っ張ると、1メートル近く伸びる。粘土同士がくっつく。この「粘り」と「弾力」のお陰で、表面がきれいに。
・白黒色に加え、マゼンタ・イエロー・シアン・の三原色がありそれらを混ぜて色を作るので「着色」作業が不要。汚れが出ない。
「Mixiねんどコミュニティ」では「関東ねんど会」という集まりがあり、毎月東京・埼玉・千葉・横浜の公民館で良い年のおっさんたち(笑)が30~40人も集まって粘土をこねてました。私以外はほぼ皆、(1)の造型用粘土でしたが、関東だと参加者さんにプロの造型師さんもたくさんいらっしゃるので、色々と勉強させてもらいました。「機会」に恵まれるという点で、地方と関東ではやはり圧倒的な差がありますね。
大分のこれからの若い人がどんどん外に出て行って、外の空気を吸収してきてほしい。そしていずれ、大分を出なくてもすむようになってほしいです。
モデルマジック作例1「ダラビチ博士」
「トイレット博士/とりいかずよし」少年ジャンプ 1970(昭和45)~77 より、ダラビチ博士。
初めてモデルマジックで作った作品。2008年。へたっぴでめちゃめちゃ恥ずかしいですが、これを見て自信をつけて「ものづくり」人口が増えてくれたら幸いです。
アタマの表面を見ると、滑らかでとても奇麗なのがお分かりと思います。まだ粘土の使い方が分からず、乾かしてから口の切れ目を入れているので口の線が荒いです。モデルマジックの作例は非常に少なく(※事情あり、後述)、こうして自分の実践経験でノウハウを得ていきます。
この時に使った造形の道具は、タミヤの「調色スティック」と、「デザインナイフ」と、ねんど延ばし用に定規のみ。完全独学で、どんな制作ツールがあるのかもまだ知りません。
モデルマジック作例2「ゲンセンカン主人」
「ゲンセンカン主人/つげ義春」ガロ 1968(昭和43)より、ゲンセンカン主人。
2体目の作品。習作は自分の好きなものでやるのが一番ですよね。最初は好きなマンガのキャラクターばかり作ってました。
ラストシーンを写真で再現したかったのですが、まるで似せられていませんね 笑。
(つげ義春「ゲンセンカン主人」より引用)
モデルマジックの良いところ。今後いくつかのねんど素材を紹介しますが、この髪の毛は今のところモデルマジック以外のねんど素材では私には作ることが出来ません。
薄く伸ばして、ハサミで切り揃えています。
コミュニティ「関東ねんど会」に参加して最初の作品。2008年。横浜の公民館で皆さんと雑談しながら、不慣れなもので、2時間ほどで結局お面の鼻しか作れなかったのを覚えています。ねんど会はまだ存在しているのだろうか・・?
モデルマジック作例3「死神デース」
「死神デース/赤塚不二夫」ぼくらマガジン 1970(昭和45)~71より、死神デース。
モデルマジックの3作目。2008年。「ゲンセンカン主人」の様なリアル系の造型はまだ荷が重かったので、デフォルメが素晴らしい赤塚不二夫先生のキャラクターで練習。とりいかずよし先生は赤塚先生のお弟子さんなので、ダラビチ博士と死神デースの作りはよく似ています。
デースの方がパーツも多く、少し難しくなっていますね。口の作り方が、ダラビチ博士の経験で上達しています。
アタマ表面のシボシボ感で、モデルマジックのマットな質感が伝わるでしょうか?
ダラビチ博士よりも全身スタイルがバランス良く作れてきているものの、まだまだ色んな部分でおっかなびっくりな手馴れていない感が目立ちます。
※モデルマジックの事情
さてモデルマジック粘土のお陰で自分の造型がスタートできたのですが、痛恨の大弱点がありました。
2006年に中国製セルロイドのオモチャから毒が出たあおりを受け規制が厳しくなり、モデルマジックは日本での輸入が停止となってしまっていたんです。なので、これらの習作は横浜と渋谷の東急ハンズに残っていた最後のロットで作ることとなりました。
これ以後十数年、モデルマジックに代わるねんど素材をずっと探す旅に出ました 笑・・。
(2021年現在、どうやらアマゾンで購入できるようにはなりましたが・・この項目次回以降へと続きます)