初見の人に言ったら関係切られるレベルでキショい慣用句探してみた

※別のブログに載せたものの再掲です

慣用句はお好きですか。

「胸を借りる」「手を焼く」「木で鼻をくくる」……。2つ以上の語が結びついて、そのままの意味ではなく比喩表現として使われる慣習的な言い回し、それが慣用句。誰でも知ってる有名なものから実践には不向きで教養として知っているだけのものまで、かなりの数が存在します。個人的にはことわざよりも使いやすく日常会話に混ぜこみやすいので好きです……と言おうとしたのですが、どうやら広義の意味ではことわざも慣用句に入るそう。

そんな慣用句ですが、文章を書く者の端くれとしてはやはり重宝しております。あってもなくても話は通じるけど、あると少しだけ表現が豊かになる。そのまま言い表そうとすると長ったらしくなってしまう文を短く端的に変換する役割もあるので、この世から慣用句が無くなったらありとあらゆる文章が回りくどく分かりづらいものになるでしょう。

 ただし慣用句にも難点があります。それは、『知らないと通じない』ということ。当たり前だろって話ですが、これがかなりの致命的欠陥なのです。慣用句って、「胸に刻む」とか「顔から火が出る」といった何となく連想ができなくもない様なものから、「へそで茶を沸かす」とか「生き馬の目を抜く」とか知らない人が聞いたらはぁ??って言いたくなるようなわけわからんやつらまであるじゃないですか。昔の人が当時の感覚で考えたものなんで仕方ないんですけど、『聞いても想像できない』というのは比喩表現としてはあるまじき欠陥だと思うんです。
そんなわけで、今日はこんな企画を持ってきました。題して、

『初見の人に言ったら関係切られるレベルでキショい慣用句探してみた』

額面通り受け取れば気持ちの悪い慣用句というのは意外とたくさんあります。例えば「膝が笑う」とか「喉から手が出る」とか「目玉が飛び出る」とかその他諸々。妖怪か?あまりにもたくさんあるので、今回はその中でも『関係切られるレベルでキショい』もののみに絞って探しました。その上で誤解のされやすさ、つまり比喩表現だと気づけないくらい日常会話へ溶け込んでいるかどうかも評価基準にさせて頂きました。妖怪っぽいものや想像のしにくいカオスなものは省き、「気持ち悪い」に全振りした慣用句ランキング。どうぞ覚悟の上、ご覧下さい。


『道草を食う』
意味:馬が道端を草を食って進行が遅れること。転じて、目的地へ行く途中で他のことに時間を費やすこと。
例文:
「遅かったね〜」
「いやーちょっと道草食っちゃってさ」
「え」
いいですね。どちらかと言うと「遅いよ〜どこで道草食ってたのさ」みたいな感じで誰かに言われることの方が多いという印象がありますが、それを差し引いてもインパクトとしては十分です。パッと言われて想像しやすいシンプルなキショさがありますね。え…こいつ雑草食ってきたの?みたいな。生活に困窮して食べれる草を探し食す方は一定数いらっしゃいますが、待ち合わせに遅れてまで草を食ってくるというのには貧困とかいう次元ではなくその人の何か触れてはいけない"癖"のようなものを感じます。


『親の脛をかじる』
意味:子が自立できていないで、親に養われていること。
例文:
「ワルツは実家暮らし?」
「そうだよ〜親の脛かじってるw」
「え」
これはあまりにも有名な言い回しすぎてもはや「気持ち悪い」と感じる人は少ないかもしれません。でもきちんと想像したらちゃんと気持ち悪いです。審査員の個人的背景を持ち出して申し訳ないですが、我が家は母親が働いていないので父の稼ぎであらゆるものがまかなわれています。父が身を粉にして働き、その給料で私は大学に通い飯を食い暖かい部屋で寝ているわけです。ではそんな父親の脛を実際に見てみましょう。50手前のおっさんの脛です。スネ毛が生えています。綺麗なはずがありません。もしかしたら加齢臭とかもするかもしれません。さあかじってください。……私は嫌です。


『涙を飲む』
意味:悲しさや悔しさを堪える。
例文:
「それは無理だよ〜」
「うう…涙を飲んで諦めるわ」
「え」
BL漫画とか女性向け漫画とかなら普通にありそう…という考えが一瞬頭をよぎったものの。ふと、これは誰の涙でしょうか?この文脈で相手の涙を飲む方がそれこそ狂気的ですから、普通に考えて自分の涙でしょう。体の構造的に、人間は自分の涙を自分で舐められるように設計されていません。それができるのは爬虫類とかでしょうか。となると、私が自分の涙を飲むには涙をビンか何かに採取してそれをグイッといくことになります。その姿を想像するとキショくないですか。ただ、お分かりの通りキショさを感じ取るまでにそれなりの道のりと想像力を要するのでインパクトは薄いです。直感的に「キショ!」と思えないのが若干の減点対象でしょうか。


『眉に唾つける』
意味:騙されないように用心する。
※ここから転じて、真偽の確かでないもの。信用できないもの。という意味の『眉唾物』という言葉もある。
例文:
「○○なんだって!」
「えーそれほんと?怪しいなぁ。眉に唾をつけて聞いた方がいいかも」
「え」
この人謎の宗教ハマってる?と思われそうな一言。どちらかと言うと「その話って眉唾(物)だよね」という言い回しの方がよく使われる気がするので、あまり日常生活での登場頻度は多くないかも。でも語の持つ気持ち悪さはトップレベルです。シンプルに汚い。まるで鼻くそを丸めて食べたり鼻水を舐めたりする小学生のよう。それに匹敵する『自分の唾を眉毛につける』という行為を大の大人がやっていると思うとおぞましいですね。


さあ、最後になります。大トリを飾るのはこちら。
『爪の垢を煎じて飲む』
意味:優れた人を模範とし、その人にあやかるようにする。
例文:
「家帰ったら今日の課題すぐ提出するんだ」
「え!偉すぎ〜!爪の垢煎じて飲ませてほしい」
「え」
キモい。ただただキモいし汚い。お前の爪の垢が欲しいってだけでもキモイのにそれをわざわざ煎じて飲むっていうのがこれ以上になく気持ち悪い。なんでわざわざひと手間加える?申し訳程度の殺菌のつもりか?
実を言うとこの例文の会話は本当にあった話で、この事件をヒントに今日の記事を思いつきました。友人にはちゃんと説明をして誤解を解きましたが、他にも誤解を与えるような慣用句ってありそうだな…と。


というわけで以上。いよいよ順位の発表です。
初見の人に言ったら関係切られるレベルでキショい慣用句選手権栄えある第1位は……

『爪の垢を煎じて飲む』

でした!
他とは比べ物にならないくらいの気持ち悪さで、たったの12文字でここまでの汚さと変態さを表現できるのは本当に凄いと思います。日常会話への溶け込みもばっちり。何せ実践で証明されていますから。
以降の順位は以下の通りになります。

2位…眉に唾をつける
3位…親の脛をかじる
4位…道草を食う
5位…涙を飲む

皆さんどれも素晴らしかったです。おめでとうございます。にしてもこうやって1位から5位までを並べてみるとやはり相当キショいですね。順位に差はあれど、皆ここまでのし上がってきた精鋭達ですから。このキショさを背負ってこれからも頑張っていってほしいです。

さて、そんなわけで初見の人に言ったら関係切られるレベルでキショい慣用句を集めてレビューしてみました。お互いのIQが30違うと会話が成立しない、なんて説があったりしますが、言い回しや慣用表現は知らないと本当にアンジャッシュのようなすれ違いが発生しそうです。たくさん本を読んで、表現のストックを増やしておくべきですね。

今回のものはあくまで個人的ランキングなので、「こっちの方がキショい!」というイチオシの慣用句があればどなたか是非教えてください。

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