BLEACH @ 新木場Studio Coast (10th Jan. '04)【アーカイブ記事】

初出:Smashing Mag, 2004年

『WARPED Tour '04』に出演したブリーチを見た。何故かステージの入り口が開きっぱなしになっていたのでリハーサルから彼女達のライブを見た事になる。そのリハーサルを見てつくづく思ったのは、本当に緊張感のあるバンドだと言う事だ。確かにリラックスしたやり取りもある。時折聞こえてくる会話には笑い声もあるし、こちらも一緒になって笑ってしまうのだが、その時間が長続きしない。すぐに3人ともストイックな表情に戻って納得のできるサウンドを探していく。時間にして30分程度のリハーサルだった。しかしそれはずいぶんと長いと感じた。

一旦ステージ脇に引っ込んだメンバーが再度、ステージ上がる。リハーサルの時からの緊張感はそのままだ。場所はかなり狭かったがフロアにはかなりの人が入っている。祝すけのファニーなMCが入り、そのまま轟音の波(但し少しばらけた演奏)が押し寄せてくる。MCの内容と音のギャップに驚いている間に演奏が固まってきた。あとはもうブリーチの独壇場だった。決してダンサンブルなリズム構成ではないのだが、その演奏が人を踊らせる「うねり」を生み出していく。その「うねり」はファスト・ナンバーだけでなくスロー・ナンバーでも生きている。スロー・ナンバーは"挑戦" と言う曲だった。この曲がハードなナンバーが多いブリーチの中で「奇襲」の意味合いを持つ曲ではなくて、きちんと作り込まれた曲であると言うのは大きなポイントだと思う。一介のハードコア・バンドからユニークなロック・バンドへ変わっていく可能性は充分に感じる事ができた。

そしてもう一つ、このバンドの醸し出す雰囲気が印象的だった。先述した通りに緊張感は充分だし、何よりも殺風景な雰囲気だ。確かにMCは面白いが、それがリラックスの方向には行かないのだ。客とのコミュニケートにもなっていかない。それが良いのか悪いのかは時と場合にもよるだろうが、今のブリーチは「なっていかない」のが良いと思う。何故(例えば)祝すけのファニーなMCがリラックスに向かっていかないのか。それはカンナが見せる表情とボーカルも含めたサウンドがそうさせているような気がする。どこかやり場のない、苛立ったようなカンナの佇まいはブリーチの鳴らしているサウンドをそのまま表しているような感じがした(そう考えるとあの3人は大変絶妙なバランスでバンドを組んでいる事になる。これは凄い偶然だと思う)。そして気付くとその殺風景が狭い空間を完全に支配している。外ではスケボーのBGMに浮かれた感じのパンクが流れていたはずだが、ブリーチのライブはここが本当はそういう場所だった事を忘れさせていた。

ライブの時間も30分でこれはリハーサルと同じ時間だ。しかしリハーサルの30分よりも倍以上に長く感じた。鳥肌を立てていたらライブが終わった。そしてその熱は彼女達が楽器を片付けている時にも強く残っていた。ここから出ていきたくないな、そんな気持ちを久々に味わった。最高。

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