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James Ferraro - Skid Row (2015)

テレビ番組のBGMやテレビCM、多くの人に顧みられることなく消えていった音楽、人々の生活音と言ったものをサンプリングしたらひどく荒廃した景色が浮かぶサウンドになった、という作品。

個人的には映画「ブレードランナー」の、あの誰もいないアパートのことを思い出す。古くて暗く、孤独に包まれている。暗い部屋でノイズ混じりのテレビをボーッと眺めている。それは決して良い時間ではないけれでも、このアルバムを聴いているとそんな時間が結構美しい時間のように感じられる。ずっとこの時間が続いてもいいかな…なんて思うのだ。

サンプリングされている音自体は白々しいくらいにハイテンションだったり、洗練されたムードを感じさせるものだ。もともとは景気の良い時代に作られたサウンドだったのかな思わせる。それが荒廃したサウンドの一部になる事で、その好景気からこぼれ落ちた世界に目が向けられているようにも思う。

そして使われているサウンド自体、人々の耳に残る事なくこぼれ落ちていつの間にか消えてしまったものだろう。こぼれ落ちたサウンドをサンプリングして別の世界を再構築する手法は実にDJ的と言っていい。さらにジェームス・フェラーロの場合、サンプリング・ソースが生まれた時代の裏の部分を感じさせている点で、政治的な音楽となっている。リリースが好景気に沸いていた2015年である事を踏まえると、社会批評という点では重たい意味が生まれる。そして今の日本を思えば、この荒廃した景色を描くサウンドは聴く価値があるはずだ。


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