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ハナマルの中も日当たり良好です

この一年、最も印象的だった出来事といえば「ハナマル」が我が家に来たことだろう。ハナマルというのは、わたしが2020年の12月に購入したシトロエン・C3のキャラメルエディションという特別仕様車に付けた名前である。
昔から、いつか柴犬を飼おう、そのときは「花まる」という名前をつけて、何をするにも「えらいぞ〜〜!花まる!!!」とわしゃわしゃ撫でくりまわそうと思っていたのだが、柴犬を飼うより早くマイカーを買ってしまったので、より大切に可愛がるためにもハナマルという名前を先にクルマのほうへ譲ることにした。彼女はフランス生まれなので、カタカナ表記が適当だろう。いつかほんとうに柴犬を迎え入れることがあれば「これが君のお姉さんだよ」と教え、ハナマルに乗せてやり河川敷を一緒に走ろう。

最近、自分の部屋が欲しいと強く思うようになった。夫と二人で過ごすのは楽しいけれど、ときどき「わたしだけの空間」に閉じ籠りたくなる。そこは本で覆われた狭い書斎のような場所で、少し散らかった机とお気に入りの雑貨をごろごろ並べた低い棚があり、ひとりファッションショーのための姿見も置いてある。隅っこ感があると安心できて尚良い。時計はいらない。ときどき日向ぼっこができるような南向きの窓があれば、悲しいことがあっても日の光を浴びてまた次の日から頑張れるかもしれない。
リモート勤務を推奨されてはいるものの、コロナ以前の我が家は寝るために帰ってくる場所だったのでデスクワークができる場所は残念ながら一人分しかない。夫がリモートの日は席を譲ることに決めているので(わたしのほうが場所も時間もフレキシブルに都合がつけられる)、ソファの上でひとり背中を丸めながらラップトップを叩いているとますます自分の部屋への憧れが募り出す。

サツキとメイの家の、お父さんの部屋なんかもう最高だ。理想のかたまり。思想と思考の断片をぎゅっと寄せ集めたような箱庭があれば、どれだけ心が凪ぐだろうと思う。(でもこの部屋で見積りとにらめっこするのはいやだな)


それでもわたしたちは今、この小さな家で肩を寄せ合って暮らすしかないので、しょうがなく家から飛び出しハナマルの中を少しずつ「自分の部屋」のようにあれこれ手を加えることにした。せっかく佇まいもインテリアもそのままで充分かわいい車なのであまりカスタムしすぎるのは野暮だとわかっているけれど、ハナマルにはもう少しだけわたしの箱庭作りに付き合ってもらいたい。わたしは、自分が居てもいい安心できる場所を自分でちゃんと作りたい。

2021.2.28

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