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②この話はそれからどうなったのか

しかしこの話からもうだいぶ経っているのに、今この『アイドルの自由』はその時よりも特に前進したり広がったりしたようには感じない。
本当はリップの色という象徴的な話をきっかけにもっと議論されて欲しいし、アイドル自身ももっと積極的に発言して欲しいのだが、アンジュルムにおいてもあやちょの卒業以降、そんな風なことが起きているようには感じないし、実際にはむしろ狭まっているようにすら思う。
またこの話があまりにもキャッチー過ぎたために、逆に『アイドルの自由』というものがこの『リップの色を選ぶ』という話だけの狭い範疇に固定化されてしまっているようにも感じる。

あやちょはその後、2018年4月5日にグループを卒業することを発表している。アンジュルムの中でさらに『アイドルの自由』を拡大するために活動するのだろうと思っていたがそうはしなかった。
卒業する2019年6月18日までの約一年間で、蒼井優さん、菊池亜希子さんプロデュースによる『アンジュルムック』が話題になったことや、人の多様性や真っ当に生きることを歌った『46億年LOVE』をリリースしたことなどにより「アンジュルムはこういうグループです」ということはファン以外にも知られることにはなった。
しかしよく考えればリップの話以上の何かが前進したという感じではなかった(知られる、ということを前進と捉えることもできるが)。

アンジュルムを辞めた理由のひとつとして後に語られるのは、グループのみんなが同じひとつの方向に向かうのは多様性を無視することでもあるし、年端も行かぬ10代の子供にそれらの考え方を押し付けることは危険ではないかという戸惑いから、『アイドルの自由』というテーマはひとりで追求することにした、というようなことだった。

これを挫折というとあやちょは怒るかもしれないが、かつては『ずっとアンジュルムにいる』と言っていたあやちょの予期せぬ卒業宣言は、今後もアンジュルムのメンバーを続けていくことに行き詰まりを感じていたのが理由なのは間違いないだろう。

あやちょはその後ソロの『アイドル』として活動を始め、アンジュルムの時は最後まで言うのをためらっていたという『ジェンダー』や『フェミニズム』という単語も使うようになり、より明確な形で自分の考えを自由に語り、『アイドルの自由』を拡大するために独自に活動している。


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