決戦は金曜日
今日は心拍確認の予定の日。
前回の妊娠を思い出しすこしセンチメンタルになりつつも、仕事が少し忙しくそれに紛らしてもらいながら過ごして検診は夕方からだった。
前回の妊娠発覚から2週間。
眠りづわりがあったりすこしのつわりがありつつも他の人よりも症状は軽いように思う。前回のつわりよりも食べられるものは多い。匂いには敏感だが。
コロナ禍だから余計に感じていることだが、ひとの死は常に隣り合わせだ。元助産師だった経験もあるが、それ以上に前回の流産はその感情をより強いものにしたと思う。本当に儚い。今回の妊娠について適度に期待をせずにいようと思ってはいるものの、結果を知るのがものすごく怖かった。また死と向き合わなければならない可能性が出てきて、2回目のそれになった場合自分が耐えられるか心配だった。
そんな不安を抱えながら産婦人科へ行く。夫がそわそわしながら病院の前までついてきてくれた(コロナで来院は最低限の人数に制限されているので)。
産婦人科では当たり前のように尿検査と血圧測定、体重測定をされて扱いとしては妊婦だ。でも私は心拍が確認できるまでは過度な期待をしないように母子手帳はもらわずにいた。
思いの外早く診察室に呼ばれ、前回の血液検査の結果が特に問題がないことを説明されてから内診へ案内される。
プローブを差し込まれ胎嚢が成長しているのと同時に胎芽が成長しているのもすぐに見えた。あ、今回は大きくなってる、と思った。問題の心拍。先生が心臓部分と思しきところを拡大している。
そこにはエコーの中で波打つ心臓が見えた。モニュモニュ心臓を動かすと小さな個体はそこで早くも生命として時を刻んでいた。宿っていた。まさに宿るということばがピッタリだった。
心臓部分にフォーカスをあて、心拍音も聞くことができた。助産師の時にドップラーで聴いていたあの音とおなじ音だった。妊娠、したんだあ。
そう思うと診察台の上でうるっとした。
「心拍も確認できて、大きさも順調そうですね」
そう言われて次回までに母子手帳を受け取るように言われて病院をあとにした。夫は駅前のスタバで待っていると言っていたので連絡せずに向かう。
カフェで待つ夫に告げようとすると涙が溢れそうになり「心拍確認できたって」と小声でしか言えなかった。