湿度100%

故郷はすきだが実家は嫌いだ。

帰省をするたびに暗黒の気持ちが蘇り、普通の家庭とは何かを知りたくなり羨ましくなり憧れる。出産してからその苦しみはさらに増して、帰省のたびに頭痛と吐き気が酷くなる。

普通を知らないから自分が子育てする時には理想を演技するしかない。宙を掴むような感覚で試行錯誤。自分が受け取らなかったなにかを与えるということは本当に難しくて、正解などない育児の世界は途方に暮れる。

自分の親をただ「毒親」そのひと言で片付けられるのならどれほど楽か。ときに縁起の悪いことを考えるくらいには嫌いだし苦しめられているが、そんなことを考える自分にもちろん罪悪感がわく。普通にしあわせな家庭環境で育ちたかったし子育てしたかった。ただそれだけなのにここまで悩まなければならないのは、「親ガチャ」のせいなのか。そんな名前に集約できるほど簡単な問題ではない。わたしの心や思考回路にまで大きな影響を及ぼして、そんな風に纏められたくない。わたしの心や考え方が適当に扱われているようでとにかくうんざりする。自分で心を保つ方法を知っているなら、とっくにそれを実践している。ああ、空虚だよ。

湿度が不快に感じられない北海道に来たというのに、私の心は湿度100%のまとわりつくような不快感と全く同じようなベールを被って踠いている。息苦しい。