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BEST SONGs OF JANUARY, FEBRUARY & MARCH 2022


※順不同です

1. HEAVEN'S DOOR/Falling Asleep
[Metalcore/Post Hardcore]

長野県松本市にて結成されたメタルコア/ポストハードコアバンド、Falling Asleepのシングル。活動当初、叙情メロディックハードコアのエッセンスを取り入れた哀愁漂うメタルコアを鳴らしていたFalling Asleepは、作品を重ねドラマティックで壮大なサウンドに進化。2020年リリースの「Vertigo」以降は、所謂ニューコアに分類されるであろう音楽を指向している。今作もニューコア的側面を強く感じさせる楽曲だが、効果的に差し込まれるドラムンベースや美麗なメロディ、シネマティックなエフェクトなどの多種多様なアプローチは、シーンに溢れかえったその他大勢のニューコアバンドとは一線を画す。既に飽和状態にあるニューコアをネクストレベルに押し上げてくれるのは日本のFalling Asleepかもしれない。


2. WAKE UP! A NEW DAWN IS WAITING FOR YOU./CRUSHING MY PALMS BETWEEN THE GLASS SHARDS YOU GAVE ME
[Screamo/Noise/Math Rock/Post Rock/Black Metal]

フィンランドの狂気、CRUSHING MY PALMS BETWEEN THE GLASS SHARDS YOU GAVE MEのシングル。前作かつ処女作のセルフタイトルEPで、現世で降りかかる終わりのない苦しみから自暴自棄になった心情や様子を、エモヴァイオレンスやスクリーモ、ノイズ、マスコアで表現していたCMPBTGSYGM(バンド名長過ぎるので略)。約7ヵ月ぶりのリリースとなる本楽曲では、持ち合わせていた要素を保持したままポストロック、ブラックメタルに急接近。叙情性と凶暴性の両極的要素が18分という長尺の中でアーティスティックに表現されている。自死一歩手前の状態にも感じられた前作とは打って変わり、かすかな希望が見え始めたことがタイトルとサウンドから伺える今作。次作では木漏れ日が降り注ぐようなシューゲイザーになってたりして。


3. Separation Souvenir/Foreign Hands
[Metalcore/Hardcore/Post Hardcore/Screamo]

アメリカ・デラウェア州を拠点に活動するメタルコアバンド、Foreign Handsのシングル。90'sのメタルコアをベースにニュースクール・ハードコアやカオティック・ハードコアを適量ブレンドした、雄々しくもスタイリッシュなサウンドを貫いてきたForeign Handsも、現在進行形で盛り上がりを見せるリバイバルの波に乗り、90'sポストハードコア、スクリーモのメロディックなエッセンスを投入。ブルータリティとメロディックのバランスが取れたメタルコアに進化している。SeeYouSpaceCowboyやWristmeetrazor(Foreign Handsのボーカル、Tyler Norrisがギターを担当している)のファンに強く勧めたい1曲。


4. See Through You/Spyres
[Alternative/Pop Punk/Indie Rock]

イギリス・グラスゴー出身のオルタナティブロックバンド、Spyresのシングル。2017年に16歳のEmilyと17歳のKeiraがアコースティックデュオとして結成したSpyresは、ソーシャルメディアで声を掛けたJudeとJudeの知り合いだったAlexを加え、4人組バンドに。ポップかつキャッチーでありながらダークなエネルギーに溢れる魅力的なロックサウンドは、グラスゴーを中心に大きな話題となり、UKロックシーンに旋風を巻き起こしている。2022年最初のリリースとなる本楽曲では、よりダークでオルタナティブなサウンドに傾倒。EmilyとKeiraが織りなす美しいボーカルハーモニーとのコントラストが効いており、一聴で耳に残る。今年リリース予定のEPは名盤が約束されたも当然か。


5. 再教育/DEZERT
[Alternative/Metalcore]

4人組V系ロックバンド、DEZERTのシングル。Miyakoが掻き鳴らすヘヴィーなギターとリスナーの脳みそに刷り込ませるかのごとく反復する「ラッパッパラッパ再教育です」という歌で幕を開ける楽曲は、要所のアクセントやブレイクダウンにシャウトが織り込まれた変態以降最ヘヴィーな仕上がりで、往年のファンも歓喜必至。耳に残るDEZERT節のメロディはもちろんのこと、毒気を含みながらも未来を見据えた千秋らしいリリックもあり、個人的にはDEZERTに求める要素全部盛りで最高の一言。「TODAY」以降のストレートなロック路線で距離が離れてしまった往年のファンにもリーチできる訴求力があるんじゃないかと思う。


6. Gloomsayer/Revoid
[Metalcore]

オーストラリア・ブリスベンを拠点に活動するメタルコアの新星、Revoidのシングル。新体制後最初のシングル「Cut Me Down」から約1年3ヶ月ぶりのリリースで、割と感覚空いたなという印象だが、どうやら楽曲制作を根詰めて行っていたみたい。長きに渡る制作期間の中で生み落とされた本楽曲は、浮遊感のあるアトモスフェリックなシンセや静と動を意識した楽曲構成など、BLEGHでお馴染み某○rchitectsからの影響が全面に出たスタイル。ブレイクダウン寄りのリフワークなんかもろ○one With the Wind。単なるフォロワーで終わらない強い個性…は現状見当たらないけど、コーラスのキャッチーさとそこはかとなく漂う哀愁は、オーストラリア発で世界的人気を獲得しているPolarisやThe Amity Afflictionを連想させるし、2バンドに負けず劣らずのポテンシャルを秘めてる気がしてる。4月リリース予定のデビューEPは要チェック。


7. Boscobel/Sooner
[Alternative/Dream Pop/Shoegaze/Indie Pop]

アメリカ・ブルックリンを拠点に活動するオルタナティブロックバンド、Soonerのアルバム「Days and Nights」の1曲目。当初2020年頃リリース予定だったアルバムは、コロナの影響でレコーディングに遅れが生じ延期。今年の3月末に満を持してリリースとなった。アルバムからの先行シングル第1弾だった本楽曲は、第2弾の「Thursday」と同様にオルタナティブロックとドリームポップ、シューゲイザーをブレンドした作風。元来のインディポップからドリーミーなオルタナティブロックに傾倒した2020年作の「Happy Sometimes」(2020年地点ではアルバム収録予定だった)から地続きでありながらも、シューゲイザー由来のザラつきや幽玄的な世界観など、新たな側面をリスナーに提示してくれる。持ち味ともいえる低温感はそのままに、よりユニークかつフィールグッドなバンドに進化していくSoonerから目が離せない。


8. Watchtower/The Devil Wears Prada
[Metalcore]

アメリカ・オハイオ州出身のメタルコアバンド、The Devil Wears Pradaのシングル。ミドルテンポなサウンドでしなやかなさと上品さを醸していた前作「Sacrifice」とは対照的な、エネルギッシュでアップテンポな楽曲。冒頭の機械的なエレクトロニクスを合図に、一瞬でトップスピードに到達し駆け抜ける様は、初期TDWPを想起させる。ルーツを遡りつつも、活動を重ねて得た経験や技巧がじんわりと楽曲に溶け込み、バンドとしての円熟と新境地を同時に味わせてくれるメタルコアバンドはTDWPくらい。


9. Gyal Drill/MEZZ
[R&B/Hip Hop]

東京を拠点に活動するシンガー、MEZZのデビューシングル。00年代のギャルカルチャーとUKドリルをクロスオーバーしたという楽曲は、古き良きTVショウで流れていたJ-R&Bのような懐メロ感もあるし、聴いたことのない新しさも感じさせる。系統は異なるけど、UKのPinkPantheressやNia Archivesに対する日本からの回答みたいなところがあるかもしれない(あくまで個人的な意見)。それこそPinkPantheressみたいにTik Tokで曲が跳ねたりなども十分に考えられる。今後のリリースと活動が今から楽しみ。


10. SONG6/CMD81
[Metalcore/Nu Metal]

昨年始動と歴の短いバンドながら、質の高いニューメタルコアで局地的に話題沸騰中のCMD81が3作目のシングルをリリース。このバンドはサウンドデザインが芸術的で、ホラーテイストのシンセとドラムンベースが非現実的かつシネマティックな世界観を醸成している。Motinless In Whiteを連想させるシンセやWage Warばりの重厚感等、名のあるメタルコアバンドからの影響を残しながらも、洗練された作曲スキルでオリジナリティに昇華させる様は、既に大物感も漂う。後にリリースされるであろうアルバムやEPが既発を踏襲したコンセプチュアルな作品になることを期待。


11. kaleidoscope/Exit Dream
[Post Harcore/Shoegaze/Dream Pop]

今年始動したイギリスの4人組ポストハードコアバンド、Exit Dreamのシングル。ex-NaploleonのWes Thompsonを中心にex-CaseyのLiam TorranceとMax Nicolaiがメンバーに参加、LoatheのErik Bickerstaffeがボーカルをプロデュース、CounterpartsのJesse Doreenがプロデュースと作曲で参加、MVをStatic DressのOlli Appleyardが制作というあまりにも豪華なラインナップに、自分含め各方面で嬉しい悲鳴が上がっていた記憶。サウンド的にはシューゲイザーとドリームポップ由来、Loathe影響下のポストハードコアサウンドで、空間的かつ煌びやか。一聴で眩い恍惚の世界へ誘われる。Loathe、Teenage Wrist、ASkySoBlack、Bleed、Soul Blind、Angel Numberのリスナーにおすすめ。


12. Bacteria/Clear Capsule
[Shoegaze/Alternative/Trip Hop]

ロサンゼルスを拠点に活動するロックバンド、Clear CapsuleのEP「Gravity Licker」からの3曲目。シューゲイザー的な要素を生むファズを用いて制作される作品群は、数多のシューゲイザーとは異なる独特のサウンドスケープと心象風景を描いており、バンドが影響を受けたとされるSFなどの未来的な印象を与える。EPに収録されている楽曲それぞれが別ベクトルの実験性を持つ中、本楽曲はMassive AttackをClear Capsule流のオルタナティブロックで再解釈したかのような、気怠くダンサブルなビートを特徴とする1曲に仕上がっている。


13. LASSO/VUKOVI
[Alternative/Pop Punk/Nu Metal]

スコットランド・ノースエアシャー・キリウィニング出身のロックバンド、VUKOVIのシングル。VUKOVIは2010年始動と比較的活動歴は長めで、途中メンバーの脱退などはありながらも、コンスタントに楽曲をリリースしている。このバンドは、学生だった頃にYouTubeの広告か何かでおすすめされ、存在を認識。初めて楽曲(確かBouncy Castle)を聴いた時からかっこいいなと思っていたが、当時CDは流通に乗っておらず、サブスクにも未加入。CD命だった自分はそれ以上深追いすることなく、いつしかVUKOVIの存在は記憶の片隅に。一昨年?Spotifyのプレイリスト、Shockwaveで2度目の出会いを果たし、そこからは過去リリースを聴き漁り今に至ります。(前書きが長くなりましたが)肝心の楽曲は、昨今イギリスを中心に隆盛する骨太なグルーブが特徴的なオルタナティブロック/ポップパンクで、Don BrocoやMarmozets、初期Icon For Hireが好きなリスナーにアプローチできそうなサウンド。Rage Against the Machineからも影響を受けているようで、ミクスチャーっぽさのあるグルーブ感はそういったところを由来としているのかも。


14. Intrusive Thoughts Always/Hey, Ily
[Emo/Synth Pop/Nintendocore/Power Pop/Shoegaze/Chiptune]

アメリカ・モンタナ州ビリングスを拠点に活動するHey, Ilyのシングル。前作「Internet Breath」までCaleb Haynesのソロプロジェクトだったが、シンセ、ドラム、ベース、ギターを正式に引き入れ、フルバンド編成に。これまでのいかにも宅録なローファイサウンドから、楽器隊の豊かな個性が伺えるフルバンドサウンドに変化している。Calebがインスピレーションを受けた、エモ、パワーポップ、チップチューン、ビデオゲーム等の様々な要素を、子供のような好奇心と無邪気さで混ぜ込むハイパーポップ的なスタイルは健在。「キャッチーなエモの真ん中にスラッシュメタルを入れよう!」といった突飛でカオスな発想を、バンドサウンドで見事実現している。


15. Night Journeys III/Courtesy
[Ambient/Trance]

コペンハーゲンとベルリンを拠点に活動する、DJでありレーベルオーナーでありジャーナリストでもあるCourtesyのデビューEP「Night Journeys」の3曲目。パンデミックによる不眠とそれに伴うパニック発作を源に制作されたアンビエント・トランスは、どこか遠くへ誘われるような、肉体と意識が霧の中で徐々に薄れ喪失してくかのような、そんな体験をもたらす。EPを構成する4曲それぞれが異なるエピソードをもつゆえ、通しての視聴をおすすめしたい。


16. 知恵/moreru
[Alternative/Noise/Harcore]

東京を拠点に活動するオルタナティブハードコアバンド、moreruのアルバム「山田花子」の2曲目。ハードコアパンク、スクリーモ、ブラックメタル、skramz、ノイズ等、様々なジャンルからの影響を感じ取れるが、狂気渦巻く爆音ノイズの中でメロディアスな一面も覗かせるサウンドは、そのどれとも意匠が異なるしオリジナリティがある。とても雑に括るならある種銀杏BOYZの進化系。音源再生すると謎に卒業式の合唱風景が目に浮かび、感情バグって涙した。


17. Hiding in the Dark/iamjakehill
[Hip Hop/Trap/Metal/Emo]

YouTubeを拠点に活動するアメリカ・アラバマ州出身のラッパー兼シンガー、iamjakehillのEP「Follow Me Into Hell」の5曲目。この楽曲&EP、今年聴いてきたトラップメタル、エモラップ系ではナンバー1。所謂ネットラッパーとして磨き上げてきた聴かせるラップが十分に堪能できる。スキルフルではあるが、既存の規格を壊してくるような突飛さはないし、なんなら教科書的ですらあるから、もしかしたら音楽有識者の大多数はあまり惹かれないかもしれない。それでも自分にはフロウや言葉の詰め込み具合、楽曲の尺等、様々な要素がしっくりきすぎて、現状好き以外の感情がなくなってる。


18. yodachi/simsiis
[Indie Rock/Alternative]

仙台を拠点に活動するインディロックバンド、simsiisのEP「white hot」の1曲目。繊細で温かみのあるボーカルとかすんだ冬景色のような音像が調和しててとてもエモい。メロディラインはインディーやオルタナティブを根底に残しながらも、Jポップライクなキャッチーさで聴く人を選ばない魅力がある。何かのインタビューでギターの人がTiny Moving Partsやthe cabs、羊文学等に影響を受けたと語っていた記憶があるけど、3バンドを知ってる人が聴いたら「なるほどな」ってなるんじゃないかと。個人的には宇宙コンビニっぽい親しみやすさもあるなと思ったり。どうやら3月末で活動休止したみたいで非常に残念。


19. 日々/OLD CIRCUS
[Alternative]

ex-シビレバル、ex-ロマン急行、ex-マイナス人生オーケストラ等のメンバーを擁する4人組V系ロックバンド、OLD CIRCUSのシングル。前述の3バンドを通っておらず、どういった音楽性を経ての今なのかはよく分からないけど、人生における世知辛さややるせなさを飾らない等身大の言葉で歌い上げる様は、V系らしからぬ哀愁が漂っていて胸を打たれる。シンプルに歌が良いギターロックのバンド(特にV系)って最近珍しいし、とても貴重。今後のリリースも追っていきたい。


20. Weightless/Soft Replica
[Vaporwave/Ambient/Shoegaze/Dream Pop]

ヴェイパーゲイズプロジェクト、Soft Replicaのデビューアルバム「Only Ever In Dreams」の5曲目。サンプリングを用いたシンセとシューゲイザーのテクスチャーを組み合わせた奇妙で美しいアンビエントミュージックが、淡いピンク色のノスタルジックな心象風景を浮かび上がらせる。影響を公言しているMy Bloody Valentineやdeath's dynamic shroud、t e l e p a t h テレパシー能力者の良いとこ取り。











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