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パトカーみたいなおばあちゃん

僕はおそらくみなさんもご存知の某雑貨屋でアルバイトしている。

お店の名前は言っちゃいけないって研修のタブレットで見たから言っちゃいけないのだ。

初めてもう約3年くらいになるだろう。
晴れた木曜も、雨の月曜もそこにいた。

僕はこのバイト先を愛している。

なぜならスタッフの大半が、キャピキャピ女子大生でとにかく楽しいからだ。

きっと最近流行りの雑貨屋だから、キャピキャピ女子大生が多いのだろう。

キャピキャピ女子大生は、大体1年くらいで就活のため辞めてしまうが、またすぐに新しいキャピキャピ女子大生が入ってくる。

ここは表向きには雑貨屋だが、実際のところキャピキャピ女子大生の永久機関なのだ。

正直言って、こんなにもワクテカな動力機関はこの世に存在しないだろう。

だがこんなバイトにも欠点がある。
それは駅の構内にあるお店故、変わったお客さんが来てしまうところだ。朝は急いで機嫌の悪い人、夜は酔っ払いと大したことはないが、一番平和に思えるお昼に、説明のつかないトリッキーでヤバいお客様がご来店する。

レジの列で、大して待っていないのに、寝そべり「こんなに待たされて、私は本当にお客さんなのでしょうか?」と買い物ストライキを起こすおじいちゃん。

会計時、「このネックレスつけるので袋から出してくれますか?」と言われたので、袋から出して顔を上げるともういないお姉さん。

ポイントカードを通して表示された3Pに「あと一人連れて来ないとね笑」と初対面でめちゃくちゃ下ネタを言ってくるエロおばさん

お昼のまどろみの中突然に、老若男女の変人達が現れる。

しかしどんな奇奇怪怪な珍事件が起きようと、それがキャピキャピ女子大生との接点になり、瞬く間に傷口は塞がっていく。

バイト中の僕はウルヴァリンなのだ。

今日も朝から働いた。
土曜日は仕事の人が少ないため、身体の空いた変人が多い日だ。

だ〜れか〜〜〜〜〜!!!

まるでお昼12時を知らせる時報のように、早速緊急イベントが発生した。

近くにいたパートさんはちょうど退勤の時間だったので、代わりに僕が生贄になるしかなかった。
感謝とお気の毒にを顔に浮かべながら、パートさんは帰っていく。

犠牲フライになった気分だ。

時報の主は、黒いパンツに白いシャツ、赤ハットコーデのパトカーみたいなおばあちゃん。

時報じゃなくてサイレンだったのか、、なんて思う暇もなく、「耳につけるやつ持ってきて!!」と叩きつけるように言ってきた。

アクセサリーのことだと思い、ピアスかイヤリングか尋ねると、「違うわ!誰がピアスを耳の穴に入れるのよ!!」とキレ良くツッコんでくる。

もちろんボケたつもりは毛頭ないし、とにかく声がデカい。

探していたのはワイヤレスイヤホンで、テレビで紹介されていて気になったらしい。

推定80代のパトカーおばあちゃんは、ワイヤレスがわからず大声で説明を求めた。

僕なりに噛み砕いて説明してみるが、出す単語単語に引っかかって全然話にならない。わからないくせに、あれは?これは?とパトカーおばあちゃんの好奇心は暴走し、全然解放してくれない。

ブルーフース...?ブフールース...?

言えそうで言えないBluetoothをどうしても言いたいらしい。

ブルージュース...?

捕まってから30分が経過した。
この時間の給料は確実に上げて欲しい。

ブルーシュース...?ブルースあっ...

僕は何も言わず、それに付き合った。

ブルーー!!

トゥース!!!

言えた瞬間口から入れ歯のトゥースも飛び出した



さあキャピキャピ女子大生の出番だ

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