第10回 讃えよ、謡え〜ねもしゅーとミュージカルの世界〜
文:根本宗子
わたしの連載は1年間ずっとその時の想いを書いてきたのですが、この度わたしも連載にテーマを設けてみようかなと思います。
わたしはここ数年「日本オリジナルのミュージカルを生みたい」という気持ちで舞台制作と向き合ってきました。
・「プレイハウス」
・「音楽劇版 今、出来る、精一杯。」
・「超、Maria」
・「Happily Ever After」
の4作はそんな気持ちの流れから生んだ作品達です。
今、日本のミュージカル界は9割が輸入ミュージカルです。
言うまでもなく、素晴らしい作品だからこそ世界中で上演されているのです。
自分の国で世界の名作が観られることは素晴らしいことだし、大切なことだと思っています。
でももっと日本人にフィットする世界観と感情のミュージカルが日本で生まれてもいいのにという気持ちがわたしには強くありました。
これは昔からあったのですが、なかなか自分がミュージカルを作ることになるなんて思っていなくて、わたしはずっと会話劇を書いて生きていくのだと何故か25歳くらいまでは自分の活動を自分で決めつけてしまっていたので、なかなか足を踏み入れていないジャンルでした。
でも、いろんな人と出会って、自分の作品は音楽、ミュージカルとの親和性が意外と高いのではないかという気がしてきて、何より自分は音楽がある舞台が好きだったので、ならば何年かかってもオリジナルのグランドミュージカルを作ってみようかなと思うようになりました。
そんなわたしの挑戦に力を貸してくれたのが他でもない清竜人さんとチャラン・ポ・ランタン小春ちゃんです。2人とはこれからもずっと新しいものを作り続けたいとわたしは勝手に思っております。それくらいいろんなことを教わり、導いてもらった2人です。
2020年、いろんなことがあり自分の作ってきた、想定していた道を少し離れ、別のルートを作らなくてはいけなくなってしまったので、きっとすぐにグランドミュージカルを作ることは叶わない今ですが、でも、そのような自分の中の流れがあり、わたしはこの3年間今まで以上に数々のミュージカル作品に触れてきました。たびたびロンドンを訪れていたのもそのためでした。
先日「イン・ザ・ハイツ」という作品を観にいきまして。
本当に素晴らしく日本での上演がうまくいっていて。何よりキャストが素晴らしかったのです。作品を観ながらこの「イン・ザ・ハイツ」の生みの親であるリン=マニュエル・ミランダ氏のことを考えておりました。
簡単に言うと彼は、俳優であり、劇作家であり、作詞・作曲家でもある大天才人間です。ミュージカル自分で作って自分が主演しているんです。なんなんこの人ってくらいの大天才。しかも彼にしか作れないメロディラインのミュージカルばかり。
みんなご存知の映画「モアナと伝説の海」の音楽を全て作っているのも彼なのです。やばくないですか。
「ハミルトン」という作品が彼の作ったミュージカルの中では一番ポピュラーで、わたしは「イン・ザ・ハイツ」は今回の日本上演で初めて観たんですよ。
あまりの引き出しの広さにもう脱帽でした。楽曲がどこでも聴いたことないミュージカルナンバーばかりなのにちゃんとミュージカルとしても緩急がある。
本当に素晴らしかったです・・・。
治安悪めの貧民街「ワシントン・ハイツ」で巻き起こる物語で、なかなか日本人には馴染みのないストーリーなんですよ。これが最初に書いていたみたな輸入ミュージカルの難しいところですよね。でも、今回これはあくまでわたしの感想なんですが、「コロナ禍で明日の上演がどうなるかわからない」ということと、この作品の持つメッセージが俳優達の中で重なっているように思えて、普段では板に乗らない感情が渦巻いていて、今、この時にこのメンバーが上演することの意味を強く出していたように感じ、あまりにその力と全員の歌が素晴らしくて涙無くしては観れませんでした。
世界中が今、「コロナ禍での舞台上演」について本当に一人一人が考えている中、作品が国を超えることがとても意味があることのように思えたのです。思えたというかそう感じさせる強さが舞台上にありました。
演出ではどうにもできない全員の想いと作品が重なった時、とてつもない力を放つのが舞台という生の芸術だとわたしは思っています。
それがこのタイミングで観られたこと、自分の明日への力になりました。
全員にありがとうと言いたいです。
そして、観ながらリン=マニュエル・ミランダ氏のことを考えたり、ああこの作品を作った人がこの作品も作っているのか、と言ったようなミュージカル知識が自分なりに知らぬ間に増えており、全然博士みたいに詳しいわけではないのですが、こうして書いて皆さんにも興味を持ってもらえたらいいなと思って、今月から「ねもしゅーとミュージカルの世界」の連載を始めたいと思います。
また来月、ミュージカルの世界でお会いしましょう。
「イン・ザ・ハイツ」みなさま素晴らしかったのですが、
田村芽実さん、とんでもなく素晴らしかったです!!彼女はまだ20代前半。嗚呼、どんな風にこれからなっていくのか楽しみでなりません。
「イン・ザ・ハイツ」は今年映画にもなるので(コロナで上映が延期になってしまうかもだけれど)気になった方はぜひチェックしてみてください!
緊急事態宣言でまた演劇が急に幕を閉じないといけない日々に心が痛く、演劇が消えてしまうのではないかと怖く心細いのが正直な今の気持ちです。ああもうこれ去年経験した気持ちだよ、もっかいやる心ないよ!と言いたい気持ちです。でも、自分が作り出せるもの、未来をしっかり見つめてしっかり立って、時間がかかっても新しい作品をきちんを生み出していきたいと思っています。
ポジティブな気持ちと演劇への愛を忘れずに、今日もまた頑張ります。
皆さんへ作品が届けられる日まで演劇以外のアウトプットまだまだ準備してますので、待ってていただけたら嬉しいです。
みんなの感想がわたしを動かしてくれます。
去年の緊急事態宣言から始動した「ほまれ」も来月で1周年!
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ほまれ〜好きなものだけ詰め込みたい!〜
誰かを貶したり、傷つけたりする文章も増えている世の中。そんな中で好きなもののことだけしか書いてない雑誌があればいいのに!!と思い、こんなマ…
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