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私は現実’で生きている

「インスタやらないと大学で友達できないよ」
もうすぐ大学に入学するというのにインスタをやっていない私は、予備校友達からこんな風に言われた。
その人たちによると今の大学生はLINEではなくインスタのアカウント交換をして仲良くなるそうだ。私は小中高とエスカレーター式で生きてきたのでその辺の事情にとても疎い。友達もインスタより面と向かって話す時間を大事にする人が多かった。

そんな高校時代までの友人たちも大学生になって次々とインスタを始めた。(私だけ浪人している。)
長いものに巻かれればいいのではないかと思う人がいるかもしれない。しかし私がインスタを始めるのに気が進まない理由がある。

それは、私の中には私だけの世界があって、それを評価するのは自分だけで十分だと思うからだ。

私だけの世界はメルヘンな世界ではない。自分が好きなものだけを集めて嫌なものが見えないように周りを塀で囲ったような、閉鎖的な空間(現実’)である。もちろん綺麗な世界だけでは生きていけないから、現実’と現実を行き来して生きている。

こう書くとなんだか妄想の世界で生きている人みたいに聞こえてしまうかもしれない。誤解を解くために簡単に言うと、私は1人でいる時間が好きで、クラシックやオペラを聞いたりフランス映画やイタリア映画を見たりしてそこから作り出した綺麗な世界にひたることが好きなのだ。

インスタにはキラキラしたものが溢れている。可愛い食べ物、綺麗な景色、お洒落な服、大人数でカメラに向けてキラキラした笑顔を向ける同年代の女の子たち。

彼女たちにはきっとこの世界が現実’なんだろう。そして彼女たちの自慢の現実’は他人に評価されることでさらに輝きを放つ。

でも私の生きる現実’はこの世界とあまりに違いすぎる。私の現実’は誰かと共有することでキラキラを増すものではない。なんだかキラキラが薄れてしまうような気がするのだ。

私は捻くれ者だから流行りに乗っかって何かするのがあまり好きではない。もうあまり話題になっていない、それでいて昔からずっと誰かの心の中でひっそりと現実’の一部として存在しているような何かに、どうしようもなく魅力を感じる。

大学で友達ができないかもしれない不安はある。でもインスタをやらなくても浪人中にはたくさんの友達ができた(その多くがインスタをやっていたけれど)。

せめて見る専のアカウントだけでも作ろうか悩みに悩んだ末、私はまだしばらくは誰にも非公開の現実’で生きることにした。古臭いとかインキャだとか言われても構わない。私の現実’は私の中でだけキラキラと輝いていられるのだ。

#エッセイ #インスタ #大学生


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