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むかしむかしのお話


昔むかし…まだ子供だった頃
玄関は開けっ放しで鍵をかける習慣がなかった頃のお話…

◇◇◇


縁側に長椅子を置きそこに将棋盤を挟んで父と父の友人が将棋を楽しんでいる。
すぐそばの小さな机には枝豆とビールがある。


『ただいま〜』

『おー!おかえり!』

と父と父の友人そして母が言う。

まだまだクーラーもそんなに普及してない
暑さを涼むために打ち水をし
その横でスイカを食べる。


そんなサザエさんに出てきそうな風景が
日常だった。

オレオレ詐欺など無く
皆んなが疑う事もなかった時代


玄関のドアを勝手に開けて
『○○さん入るよ〜』
と家に入って座り込んでしゃべって帰っていく。

懐かしい風景だ。


◇◇◇


なぜこんな話を書いたかというと
最近近所のおばさんが老人ホームへと移って行った。
段々近所の人たちがいなくなる。
寂しさもあり思い出が蘇った。


母が言う

『昔は良かったね。活気があって皆んな元気で…でも歳と共に…ね』


本当にそうだ。

昔は隣近所皆んな顔見知りで
何か困った事があれば皆んなで助け合う。
しかし今は違う。
心配して声をかけても鬱陶しがられてしまう。
先程話したご近所のおばさんのお嫁さんに
おばさんの容態を聞こうとしても面倒臭そうにあしらわれてしまった。

お節介くらいが丁度良かった時代はもうない。

『こんど会う時はお葬式かな…』

と寂しそうに母が漏らした。


時代は流れていく。

それだけ、私も大人になり母達も歳をとった。

子供頃、いたずらをしては知らない大人に怒られた。

『こらー!何やってる!』

『ごめんなさーい!』

と言いながら走って帰って行く。

そんな風景が日常だった。

その頃の大人達も歳をとり
あの頃の元気がなくなり段々いなくなるのは母じゃないが寂しい



コロナが終息したら母と一緒に
おばさんに会いに行こうと話している。

段々薄れていく記憶
それでも思い出して欲しい私達のことを…
そして、もう一度あの笑顔で名前を読んで欲しい
昔のように…

おばさん
私はあなたの笑顔が大好きでした。
たまに憎まれ口を言いながら
私の名を呼んでくれる笑顔が…

私達が会いに行くまで
元気でいてね。



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