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往復書簡・ゆのみのゆ 一通目

雨季さんと香央へ

まだ17時にもならないのに、外が暗い。こんな日々にはもうなれっこ、というより、あきあき、という方が、しっくりくるもので、今日はとくに寒くて仕方ないし、やっぱり春が待ち遠しくなる、そんな一月の半ば。

年が明けてから、もうずいぶん経ったような気もする。年末は、個人的にすこし大変なことがあって(雨季さんにも香央さんにもおはなししていたっけね、その節は、話を聞いてくれてありがとう)、そのときにためこんだ疲れからか、先週末に体調をひどく崩して身体をうごかせなくなっていたので、感染対策の自粛云々というわけでもなく(もちろんそれがないわけではないのだけど)、しばらく自室に引きこもって、やるべきこともほっぽって、ひたすら寝込んでいた。自分の部屋のなかでは、正月らしいおめでたさも、世間のすこし殺伐としたような雰囲気も、遠のいて、ときおり、最近友人におすすめされてはまったサニーデイ・サービスの「NOW」あたりをじゃんじゃかとかけたりはしつつも、すこしでも調子が崩れると、また眠るばかりだから、この国で今何が起きているかとか、海の向こうで何が起きているかとか、そういうことにようやく頭が追いついてきたのが、昨日今日、というところ。

そういえば、寝ているときに、よく思い出したことがある。思い出した、と言っても、そう昔のことではなく、めまいで倒れたのが、先週末の8日の夜、喫茶店のバイトから帰宅した時なのだけれど、その8日の夕方のこと。その時はバイトに向かう前に、地元の図書館でレポート執筆用に予約していた資料を回収しにいっていたので、ずっしり重くなったリュックサックを背負いながら、駅のちょっと幅の狭いエスカレーターにのってごうんごうんと移動していて、すると、どこかからか町内アナウンスがなっていることに気がついた。内容は、「緊急事態宣言が発令されています、不要不急の外出は控えてください」という注意喚起のようなものだったのだけれども、「ふようふきゅうの がいしゅつは おひかえください」、という言葉が、ゆっくりとした調子で、またひとつひとつ丁寧に、重たく発音されていて、それが街中すみずみまで聞こえるようにじわじわひびきわたっていく、ただそのことがまさにいまが”非常事態”であることを感じさせるような、やっぱりいま、ほんとにタイヘンな状況なんだなと今更ながらに平凡な感想を抱いて、ただすこし、ひょええと身震いした、という、まあそんなことがあり、その夜から体調を崩して体を横にしていると、天井を見つめながら、もうあの音を聴きたくないな、などと考えるようなことも、一度や二度ではなかったような気がする。

それにしても、今日は起きるのが遅すぎた。14時にやっと布団から抜け出して、レトルトカレーで簡単に昼ご飯をすませ、まあどこにいくわけでもないのに化粧はしっかりきめて気分を高め、それから福島にいる友人に手紙を出し、通販で注文した本のお金をコンビニでしはらい、ついでにビールをかって、これを書いていた。まだ課題はたくさんあるけど、ちょっといまは見ないようにして、自室でフジファブリックあたりをかけて(最近は「Chocolate Panic」がすごくすき)、時々歌っていたら、ストーブをつけていなかったことに気がついて、いまさむくてたまらない。もっとはやくきがつけ、わたし。ああさむさむ。

*写真は最近家で作ったおぜんざい

2021.1.12

よし野

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