見出し画像

『“ととのう”ブームに医師が警告』記事はちょっと変(雑記)


なぜか今になって、この記事がはてブの上位にきていたので(もしかして自分がサウナで検索しまくってたので上位に表示されているのかもしれないが)、いくつかの突っ込みどころについて書こう。

都内在住のサウナーは、「ブームでサウナは先鋭化しています。通常、サウナは90度〜100度くらいが一般的でしたが、今は120度も珍しくなく、中には150度のサウナも。水風呂はマイナス温度のところはざら。入ってて死ぬんじゃないかなって思うこともあります(笑)」

これは「大げさ」
サウナ室内の温度については、ものすごく熱いサウナで知られる「サウナ錦糸町」でも126℃(サウナイキタイより)なので、これは言い過ぎなのではないかと思う。
サウナイキタイで検索上位(イキタイ順)にくる10施設には120℃越えのところはひとつもない。(2022年1月現在)
ただ、アウフグースなどで一次的に温度あるいは体感温度がものすごく上昇することはあるので、一概に絶対に150℃のサウナが存在しないとは言えない。

水風呂の温度については、『水風呂はマイナス温度』というのは物理的にほとんどありえないので修辞的な表現だと仮定する。
確かに「シングル」と称される水温1桁台の水風呂が珍重されているというのは間違いないが、逆説的に「そんな低温の水風呂はほとんどない」ということが想像できるだろう。東京都内では『かるまる』と、調子がいい時の赤坂『サウナリゾートオリエンタル』ぐらいなものだ。だいたいの施設は11℃~17℃ぐらいの幅だろう。そこから一部施設では氷を水風呂に投げ込んだりして冷却しているかもしれないが、『マイナス温度もざら』というのはさすがに言い過ぎであると断言できる。
一方で、『マイナス温度の水風呂』という存在が完全に嘘かというと、そうではない。空気で冷却するタイプの「アイスサウナ」がある場合、空気の設定温度としてマイナス温度が表示されることはあるだろう。最も有名なものは『ウェルビー栄』の、氷が浮くほどの水風呂だ。また、冷え切った湖や海、川の水を使う場合には、一般的な温浴施設で行われるチラーによる冷却をはるかに下回す水温の水風呂ができるということも、否定できない。

発祥といわれるフィンランドの一般的なサウナは、サウナストーブ(熱源)の上にサウナストーン(岩盤)を並べ、空気とサウナストーンを熱する。温度は80〜90度程度。

これは定義に疑問が持たれる。ロウリュの存在について言及していないからだ。
本場フィンランドのサウナが日本のものに比べて温度が低めである、ということは正しいように見える。日本のように短時間で熱するのではなく、ゆっくり話しながら楽しむスタイルで、軽食やお酒を楽しむ時間すらあるのだという。
しかし、フィンランドサウナに言及してロウリュに触れないのは片手落ちではないだろうか。ロウリュといえば(すでにご存じない方はいないだろうが)サウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させ、サウナ室内の温度と湿度を上げる行為であり、フィンランド式のサウナに由来する。
したがって、石とストーブによる加熱のみでは確かに80℃から90℃程度が一般的かもしれないが、ロウリュによってさらに高温になる可能性も十分にあるのではないだろうか。

 また、正式なフィンランド式には水風呂はないということですので、サウナに入り、休憩で10度以下の水に入るというのは、研究という視点でいうと未知の世界であり、私は危ないと思います

これは「一部正しい」が「一部間違い」
水風呂は確かに日本独特の文化であるとされている。しかし、『フィンランド式には水風呂はない』というのは厳密には違う。
フィンランドのサウナ文化に「アヴァント」がある。凍った湖に穴をあけ、サウナの後にそこに飛び込む行為だ。水風呂そのものではないが、似たような文化である。

ただ、もちろん温度を急に上げ下げしたり低温の水を浴びる行為が『危ない』というのは、本番フィンランド式ではどうか、とか以前に、それはそうだと思う。全く危険がない、と言いたいわけではない。(常識的に考えて)
「健康にいいのか、悪いのか」みたいな話は、医師のほうがさすがに正しいとおもうので、記事に記載された内容の成否については言及しない。
お酒を飲んでからの風呂やサウナは危険だし、ヒートショックにもこの時期は気を付けるべきだろう。
しかし、この記事の情報に、大げさだったり一部間違ってる部分があったりすることは留意されて良いと思う。

同じ「医師」の肩書で著作されていて、サウナを推奨している本もある。

僕(作者)の考え方については、下記の記事で言及している。ざっくりいうと、
・高温サウナと低温水風呂だけがサウナの楽しみ方ではない。
・そもそもあらゆる娯楽はリスクがあるので、体調にあわせるのは前提。

確かに、温度120℃の錦糸町サウナとか、水温一桁台の『かるまる』のサンダートルネードをありがたがって、終わった後トリップしている様子はちょっと危険に見える。無理はない。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、それはかなり「極端な例」であり、サウナも水風呂も『ととのい』もサウナの一側面でしかない、ということだ。

僕(作者)個人としては、『ととのう』という言葉だけが独り歩きしたり、命の危険まで含む様々な状態を内包して使われているのが、少し怖いなと思ったりもする。
サウナが体に負荷をかける行為なのは否定できないし、『ととのい』は何も気絶寸前みたいな状態だけを指すものではない。それを目指すのはさすがに『危ない』と言われても仕方ないと思う。
これついてはいずれまた書きたい。

~サウナに興味を持ったら小説もどうぞ~


サウナに行きたいです!