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佐賀『御船山楽園ホテル らかんの湯』サウナはここまで良くなれる(サ旅2021)(サウナレポ)

 サウナブームを経て、レジャーとしてのサウナを求める人が増えた。それに応えるようにして、サウナもまたレジャーとしての性質を強めていく。
 ひらたくいえば、どんどん「贅沢」になっていくのだ。おしゃれで清潔な空間を追求した神田『サウナラボ神田』大磯『S.WAVE』、他人に邪魔されたくないという身勝手な要求に応える神保町『ソロサウナtune』、アウトドアと組み合わせて自然の中にサウナを持っていくテントサウナもその一環だ。
 共通するのは、サウナにかけるコストが高くなっていくこと。安く楽しめるリフレッシュメントとしてのサウナに対して裾野が広がっていくのは喜ばしいことだが……では、その贅沢の行き着く先はどこか?会員制サウナ?自宅にサウナを作る?色々考えられるが、その答えの一つが、佐賀にある。
『御船山楽園ホテル らかんの湯』。ラグジュアリーなサウナのいきつく先である。
 結論から言うと、ここには絶対に宿泊してサウナを楽しむべきだ。

 『らかんの湯』はお高い旅館だけあってホスピタリティが本当にすごい。佐賀の武雄温泉駅から送迎してもらうと、すでにチェックインする前からチームラボの芸術空間が始まっていて驚く。驚いて写真にとったりウェルカムドリンクでもてなされている間に部屋まで案内され、そこもまたキレイで驚く。(余談だが、あの椅子が2つとテーブルがある窓際のスペース、こんなおしゃれな旅館にもしっかりとあり、そういうレギュレーションなのかなと思う)風呂に向かうまでの間もいい香りがして、いるだけで非日常感ともてなされ感でテンションが上がってくる。

 温泉はアルカリ系の泉質で少しぬるっとしていて、しかし床が滑りやすいほどではない絶妙なぬるぬる感。体を沈めたときの肌触りがちょうどよく、「美人の湯」とされているのもうなずける。(なんかだいたいの温泉は美人の湯と言われているような気もするが)

 男湯のサウナは、入って一瞬は人がいるかもわからないほど暗く、その空間の中にご神体のように長いサウナストーブがスポットライトを浴びている。当然セルフロウリュをすることができ、ストーブの火力が高いので、ラドルに汲んだいい香りのロウリュ水が一瞬で蒸発し、暗く狭いサウナ室を満たす。座る場所が3段になっており、一番上はこのロウリュを食らうと相当熱くなる。必然、温度も湿度もかなり高めのセッティングになっており、僕(作者)の好みにばっちりだ。
 無駄な音がないのもいい。ドラマ『サ道2021』でちょうど同施設を取り上げていて後から知ったことだが、この空間には近くの森の音声がリアルタイムで流れているらしい。どうりで虫の声が近くに聞こえるなと思った。適度なノイズとなって、周囲の人間の息遣いや汗の音を相殺してくれてありがたい。
 あと、ロウリュに使える水はいい香りのロウリュ水のほかに、ほうじ茶もあるらしい。僕が入ったときに自分でほうじ茶をかけることはできなかったが、サウナ室にはほんのりと香ばしいかおりが残っていた。これもぜひ体感してもらいたい。

 水風呂は温泉水。しかもけっこう深い。つるっとしたプラスチック製の浴槽がジャグジーのようで楽しい。水温は16℃と力強く案内板に記載されており、「このセッティングが最高なんだ」という強い意志を感じる。案の定、全身を包み込むやわらかな水が気持ちいいし、ずっと入っていたくなる水風呂だ。今まで入った中では静岡『サウナしきじ』に次いでもっとも完璧に近く、水風呂のイデアに近しい存在かもしれない。最近はよく更新されがちな「この水風呂に住みたい」ランキングがまた更新されてしまった。このためだけにもサウナ愛好家は佐賀に行くべきである。

 外気浴をする場所は豊富で、①椅子②デッキチェア(シリコン製でやわらかい)③岩の上④木製デッキに直で寝転ぶ と様々だ。特におすすめなのは③の岩の上……水風呂の近くに平たい岩があり、そこに寝転ぶとちょうどよい。何を言っているのかわからないと思うが、こればかりは実際に見ないとわからないだろう。そして④木製デッキに直で寝転ぶのは、裸で大の字になって空をみあげつつの外気浴になり、静かな自然の音に包まれて青空や暮れゆく空を見上げながらととのうのは、都会では絶対にできない体験なのでオススメだ。自作『異世界サウナ』でよく描写した、自然の中での外気浴をこのときはじめて実体験することができ、少し感動すらした。

お前は絶対に宿泊すべき

 ここまででもサウナ体験としては十分すぎるほどなので、日帰り入浴ですませても十分な満足感があるだろう。しかし、それでもやはり宿泊して楽しむべきなのだ。

①夜が最高
 サウナに入り、上等な食事をしたあとも、『らかんの湯』はお楽しみがいっぱいだ。館内と庭にチームラボの作ったデジタルアートがあり、廃屋になった風呂の中にでかいオブジェクトがあるアートがあったりして必見だ。庭のほうも断崖絶壁の御船山とコラボしたアートがダイナミックで、ものすごく広い庭にアートが点在しているので、もし全部見ようと思えばけっこうな時間がかかるだろう。また、『サ道』の映像で知ったのだが茶店のようなものが庭にもあって、そこで休憩することもできるという話なので、それもぜひ体験しておきたい。



 庭でアートを堪能したあとは、けっこうちゃんと歩いた後なので、汗をサウナと温泉で流す。23時までやっているサウナには夜にも入っておくべきで、なぜなら夜空を見上げながらの外気浴ができるからだ。田舎なので星や月がものすごくよく見えて、虫の声がサラウンドで聞こえて、感動する。都会では絶対にできないサウナ体験だから、夜のサウナは絶対にいくべきだ。

②朝が最高
 朝もサウナに入ることができる。しかも、男女入れ替えだ。男女入れ替え!!これはすごいことだ。男湯だけでもラグジュアリーなサウナを、女湯側の施設までも体験することができる。特定の日を狙わなくても、一回の宿泊で両方を体験することができるというのは、マジでサウナ愛好家の需要がわかっていてえらい。当然、女性も男湯側のサウナを体験できるので、異性連れの場合は旅行の満足度がさらに倍になる。
 女湯側のサウナは、男湯側とは完全に違ったコンセプトで、サウナも水風呂もまるっきり違う。(セッティングはいっしょだが)
 まず、女湯側にはミストサウナがある。ミストサウナというのは男湯側では軽視されがちな施設だが、入っているとやはり気持ちがいい。ミスト濃度もかなり高く、熊本『湯らっくす』のミストサウナぐらいあるのでおすすめだ。
 次に、女湯側のサウナは、『暗』を基調とした男湯側と対照的に『明』のサウナで、まっしろなかまくらのようなモノの中にふんだんに光が取り込まれている。セルフロウリュができるのはもちろんのこと、珍しいのは「キューゲル」と名付けられたアロマ水のアイスボールが常備されていて、好きなアロマを楽しむことができるのだ。この「キューゲル」は、特別感といい外見のかわいらしさといい、じっくり溶けながらアロマを提供してくれる性能もあって「その手があったか!」と感心したので、いずれ『異世界サウナ』にも登場するかもしれない。(ハラウラが好きそうだ)
 水風呂はサウナ室を出たあたりにあり、男湯側より深さや広さは控えめなものの、温泉水だし数人は入れる広さはあるので、ばっちり体を冷やすことができる。頭の上から朝の光をとりこんでいるので、華やかな色とりどりのタイルにいろどられたデザインもあって、古代王族女性の浴場や芸術品を思わせる。
 さらに、男湯側には存在しない施設、「休憩室」があり、ここも本当にすごい。 ①室内外におしゃれなととのい椅子②複数種類のデトックスウォーターと冷やした緑茶③お菓子(プリンとあんこ玉、ドライフルーツ) と、味覚までも楽しませてくれるのだ。デトックスウォーターであれば他施設にもあるが、まさかお菓子までも!「そんなおもてなしがアリなんだ」という衝撃もあり、お菓子自体もおいしいので、本当にそのホスピタリティには感服するばかりだ。暖炉もあったので、外気浴をするには少し厳しい季節にも対応できるのだろう。

 確かに、『御船山楽園ホテル』は、普通の旅で使うような旅館に比べると、明らかに高価だ。しかし、それに見合う以上の体験は、まちがいなく得ることができる。ここに泊まり、佐賀の地元の食材を使ったうまいメシを食い、アートを楽しみ、サウナに何回も入る。それを旅のメインコンテンツにすることができるほど、『らかんの湯』は圧倒的な体験とホスピタリティを提供してくれるだろう。一点だけ注意するとすれば、それがあまりに圧倒的すぎるので、チェックアウトしたあと「さーて東京に帰るか!」という気持ちになってしまうし、そのあともよっぽどのことがない限り『らかんの湯』のことを永遠に考えてしまうので、ここに泊まるのは旅の最後がおすすめだ。

 余談だが、食事の際にスタッフのおばちゃんに東京から来た旨を話すと、「みなさんわざわざ東京からいらっしゃるんですよねえ。熊本のなんとかいう所に行って、福岡のなんとかに行って、それでうちに来るんですよ」と話した。
 ――おっしゃる通りです。完全にそのルートでした。



サウナに行きたいです!