雀魂キャラに学ぶ馬将(令和麻雀)入門その4

陽菜「今日は佳奈お姉ちゃんから麻雀のローカル役について色々教わったよ。馬将は役が100個もあるけど、世界にはもっとたくさんの役があるんだね。」

杏樹「麻雀のローカル役についてはこちらが詳しいですが、これは日本の4人麻雀の範囲で紹介されているので国際麻将の役は紹介されていません。日本国内ですらこれだけのローカル役が存在しているのですから、全世界で7億人ものの人が遊ぶ麻雀。古今東西どれほどの役が考案されてきたのか見当もつきません。」

陽菜「世界中の全てのアイスバーを食べることと、麻雀の全ての役でアガることが陽菜の夢なんだけど、これでまた夢が広がっちゃったな。」

杏樹「牌を積む麻雀でこうしたローカル役を大量採用するのは同卓者全員の確認が必要なので難しいですが、麻雀アプリとして実際に採用例があるのかも怪しい超ローカルルールまでもが採用可能なものが世に出ています。」

陽菜「このアプリ、佳奈お姉ちゃんが遊んでいたやつだ!」

杏樹「馬将もこのようにゲームとして世に出す計画が現在進行していますが、ゆくゆくはRPGツクールの麻雀版とも言えるソフトが開発できればいいですね。色と数字の概念さえあれば、どんなものでも牌や札に見立てて麻雀のようなゲームで遊ぶことが出来るのですから。」

陽菜「今日はアイスバーで麻雀しちゃうぞ!ツモ!バニライチゴチョコで三色同順!陽菜の勝ちだ!」

杏樹「このように麻雀で新しい役を考えるのは楽しいものですが、あまりにも多くの役を採用すると、ゲームバランスを保つのが難しくなるというだけでなく、『役の複合問題』が生じる恐れがあります。詳細はリンク先を御参照下さい。」

陽菜「これが何点、これは何点、これは…あれ、この役複合するんだっけ?わかんなくなっちゃった。」

杏樹「『役の複合ルール』については、KR-976のデータベースによると世界中のどんな麻雀でも同様のルールが採用されています。採用役の少ないルールでは特に問題にならないためでしょう。ところが、採用役の多い国際麻将ではかなり複雑な問題になってしまうのです。日本麻雀では符計算がルール上の最大の障壁と言われますが、符計算のない国際麻将ではこれが最大の障壁。得点に幅があるルールの方が楽しいが、幅を作り出すために要素を増やすと初めて遊ぶ人がルールを覚えるのが難しくなってしまう。このジレンマがここでも生じているのです。」

陽菜「手役をたくさん採用すると複合問題が起こる…もしかして馬将もそうなのかな?」

杏樹「その通りです。『その1』で使用牌、『その2』で採用役、『その3』で特別な門の扱いと馬将特有のルールを整備して、『これで人類が作り上げてきた麻雀を超えるゲームが完成した』と自負していたのですが、ここに来てマッチングに失敗してしまいました。KR-976はこの問題を解決する為には、役の複合に関するルールを変更するよりないと判断しました。そこで馬将では、『役の複合は使用札が重複しないもののみ認める』。言い替えれば、『ある役を構成するために使用した札は、別の組み合わせと役を構成することが出来ない』ということです。」

陽菜「具体的にはどういうこと?」

杏樹「例えば11233456789空77日(自色は空) ここに2空が出て和了した場合、従来の役の複合ルールに従えば三自筋順(一気通貫)、二自同順(一盃口)が複合しますが、123空が重複しているので馬将では複合しません。高点法につき三自筋順のみが適用され53点となります。」

陽菜「3+2は5だから4メンツだと必ず重複ができちゃう。だから馬将では三門役と二門役の複合は有り得ないんだね。」

杏樹「そうですね。もし重複を認めれば53+25で78点。四門役に匹敵する点数となります。これだけならそこまで深刻な問題にはならないのですが、四門役を狙う意義が薄くなるのに加えて、手牌によってはどのように手役を複合させると最も得点が高くなるのを判断するのが難しくなるのです。」

陽菜「今回のは分かりやすかったけど、『光馬』ルールが加わるとかなりややこしくなりそうだね」

杏樹「ええ。馬将ルールで考えられる役の複合は、三門役+一門役、二門役+二門役、二門役+一門役+一門役、二門役+一門役、一門役+一門役(自色刻が3つあると必ず二門以上の役ができるので一門役+一門役+一門役にはならない。)のいずれかとなります。役の複合は最大でも3つなので、役をカウントし忘れてしまうことも少ないでしょう。」

陽菜「分かりやすくなったけど、どのように手役を複合させると最も得点が高くなるかは考える必要がありそうだね。」

杏樹「それについては一つ例題を出題します。自色が空で『光馬』は無いものとして何点になるでしょうか。111222999空11177日」

陽菜「111222空(二自連刻)999空(一自九刻)に分けると26+9=35点。111999空(二自端刻)222空(一自二刻)に分けると29+2=31点。高い方だから35点だ!」

杏樹「正解です。安い二門役+高い一門役>高い二門役+安い一門役になりましたが、高得点側を安くした方が得点が高くなるのは今回のような(二自端刻+一門役)のケース。基本は高得点役を優先的にカウントしてもらえば問題ありません。」

陽菜「二門役が1〜3点差だけど、一門役で5〜7点差つくからこの場合だけ二門役が安い方が高くなるんだね!」

杏樹「そうですね。それでは折角なので前回取り上げた、『光馬』ありの点数計算問題も出題しましょう。111222999空11177日 先程の手札ですが、一門だけ数字は同じまま三光、四光になるとしたらそれぞれ何点になるでしょうか。」

陽菜「まずは111空が三光の場合を考えよ。空を月か星にすれば三色端刻になって39点、222空が2点で合計41点だ。三門役が出来たから一門役が安くなったけど高くなっちゃった。高得点役を優先してカウントすればいいわけだね。」

杏樹「111空が四光になった場合は数字を変えられますが三門役は出来ません。最も高くなるのは111空を222空にして二自同刻(30点)+一自九刻(9点)=39点。同じ高得点役が出来るのであれば、低得点役が高くなるように複合させます。」

陽菜「さっきより安くなっちゃったね。」

杏樹「ですから111空が既に三光であれば、4枚目を引いても四光にしない方が得点が高いということになります。」

陽菜「馬将だとアンカンでもカンしない方が高くなることがあるんだね。」

杏樹「222空が三光のケースは、空を日にすれば二自端刻と二他連刻が複合して29+16=45点となります。」

陽菜「222空が四光だと…数字を1か9にすれば四門端刻だね。69点だ!」

杏樹「999空が三光のケースは111空が三光の場合と同じ。空を月か星にして三色端刻+一自二刻。39+2=41点です。」

陽菜「999空が四光だと…数字を3にしたら三自連刻が出来て56点だね。」

杏樹「111日が三光のケースは、日を空にして三自端刻+一自二刻。59+2=61点です。」

陽菜「111日が四光だと…あれ?数字を変えても役ができないよ?」

杏樹「ですのでそのまま35点となります。」

陽菜「うっかり三光→四光になるようなカンをしちゃうとすごく損しちゃうんだね。陽菜テンパイしてたら何でもカンしちゃうくせがあるから気をつけよっと。」

杏樹「時間が余ったのでついでのつもりで出題したのですが、思った以上に難しい問題でしたね。役の複合条件を使用札が重複しないものに限定したのは正解でした。馬将は日本麻雀のようなメンゼンで進めれば得点が高くなる要素は一切ありません。世界的に見ても、日本麻雀ほどメンゼンが優遇されるルールは珍しいですが、このため鳴くかどうかで選択肢が増え、得点の幅も広がっているのでゲームとして面白くなっていると言えます。」

陽菜「日本麻雀以外は鳴いて手を進めるのが強いんだね。」

杏樹「その通りですが、手役の数を増やすなどして得点の幅を広げる、あるいは単に和了形を完成させるだけでは和了できない(国際麻将の8点縛り、四川血戦の絶一門縛りなど)といった制限を加えることで、『何でも鳴けばいいというものではない』ルールになっているのですね。」

陽菜「縛りはゲームを面白くするためにあるって誰かが言ってたよ!」

杏樹「一理あります。縛りが多過ぎると選択の幅が狭まりゲームとしてつまらなくなりますが、縛りがないとそもそもゲームとして成立しませんからね。しかし縛りは新しくルールを覚える人にとっての障壁にもなりかねません。」

陽菜「陽菜も最初は役が無いのに鳴いて、アガれる牌が出たのにアガれないので何で?ってなっちゃったな〜」

杏樹「そういうわけで、馬将は役無しでも『0点』として和了が成立するものとしました。しかし麻雀に覚えがある人なら御承知の通り、たとえ0点でも他家の和了を阻止して局を流せるのは非常に強いもの。一度鳴くと点数が下がりにくい日本麻雀においては、一飜縛りの存在は欠かせないものと言えましょう。」

陽菜「ロンドラのみ!満貫とか言われたら陽菜も困っちゃうよ!」

杏樹「そこで馬将では鳴いた後も得点に幅を出すために、『手役を安目高目が生じる部分役のみで構成』『光馬の存在によって使用門が固定されている場合も安目高目が生じる』ようにしたのです。日本麻雀において特に難しい問題の一つである打点差のある鳴き判断。馬将では同様の判断をほぼ毎局求められることになります。」

陽菜「役無しでもアガれるから麻雀初心者にも優しい…と思ったら、アガった時に何点になるかをいつも考えてないといけないから上級者にとっても奥が深いんだね!」

杏樹「『簡単かつ奥が深い』。両者は本来相反する概念ですから、両立させることはKR−976にとっても難しいことでしたが、ようやく形になる時が来ました。これで従来の麻雀と大きく異なるルールについては一通り取り上げましたが、他にもゲームをより面白くするためのアイデアをKR-976が世界中の麻雀ゲームから取捨選択しました。次回から改めて、役に関するルール以外の日本麻雀との相違点について解説することにしましょう。」


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