ネマタの「裏」麻雀本レビュー第19回『夜桜たま×朝倉康心に学ぶ現代麻雀』その7

第三章 副露

⑤迷彩

 本書を流し読みして真っ先に目を疑ったのがこの項目。タイトルに「迷彩」とありながら、下の牌図は迷彩とは何の縁もなさそうな門前1シャンテンの牌姿です。

 続く解説も突っ込みどころばかり。1mが残っていないことを言いたいのは分かりますが、「片アガリシャンポン」ではなく、1mが純カラのシャンポン。イーシャンテンを維持せず2枚切れのトイツ落としとありますが、1mを切ってもイーシャンテンです。

 そこから急に牌図とは何の関係もない「迷彩」の話になるのですが、本書のコンセプトであるはずの、「麻雀のルールを覚えたけど、ここから先はどうすればよいか分からない。」人向けに扱う内容とは言えません。

 折角「迷彩」つながりで染め手の話になるのですから、本項目で取り上げるにふさわしいのは「一色手の狙い方」。前回、門前指向を清純派路線、副露指向をセクシー派路線に喩えましたが、自分の色に染めてしまう一色手はまさにセクシー派代表。手軽なうえに高打点も狙いやすい。普段は門前派で清純路線な方も、一色手狙いに誘惑されることも多いのではないでしょうか。清楚なのに超セクシーなメンチンは皆の憧れですが、憧れだけあって滅多にできません。やはり仕事を選ばず、他家にマークされようと脱いで(鳴いて)こそのセクシー派です(笑)

⑥後付け

 123m45699p89s白白中 

 7sは悩まず鳴きましょう。この7sを鳴かないのは、白のみ1000点を和了って局を進めることが自分にとって不利になる時くらいです。

 牌を積む麻雀で鳴きたければ能動的に発声する必要がありますが、ネット麻雀は鳴ける牌が出ると毎回止まって鳴くかどうかを聞かれます。そのため特に下の卓ではむやみやたらと鳴いてしまう打ち手が多く見受けられます。

 しかし天鳳では意外にも、副露率自体は上の卓で打つプレイヤーの方が高い傾向にあります。むやみやたら鳴く初心者が目立つ中で、肝心な牌さえ鳴けてないから勝てていない打ち手も少なくないということが想像されます。

 鳴きまくる打ち手をバカにしたり、同卓してイライラしている打ち手は、「段位戦でそのような相手と同卓している時点で、自分はその打ち手とは別のところで大きな弱点を抱えている」ことを自覚する必要がありましょう。今回の手牌から7sを鳴くかどうかであれこれ条件を考えて鳴かなかった人より、ボタンが光ったからという理由で思考停止で鳴いた人の方が成果を得られる。麻雀というのは本当に面白いゲームです。

⑦さまざまな鳴き

 本書に限った話ではありません。初心者向けという名目で、麻雀戦術を「広く浅く」しか取り上げないのもそろそろ止めにしましょう。このままでは結局、「麻雀のルールを覚えたけど、ここから先はどうすればよいか分からない。」初心者が量産されるだけです(麻雀をビジネスにしている人にとって、その方が都合が良いという事実も否めませんが…)。

 将棋であれば、「端攻め」「美濃囲いの崩し方」のような、扱う手筋を大きく絞り、「狭く深く」取り上げた棋書も多数出版されています。麻雀であれば「一色手の狙い方」「後付けで鳴くかどうか」「形テンを狙うかどうか」。これくらい手筋の範囲を絞っても、一冊の本を書くに十分過ぎるほどの題材があります。

 キャラの需要だけで売上が期待できるからといって雑な仕事を繰り返していれば、ブームが過ぎ去ればそれっきり。末永く続く根強いコンテンツを作りたければ、やはり中身が伴っていなければならないと改めて思わされるのであります。

 

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