ネマタの「裏」麻雀本レビュー第8回『イメージする麻雀観』その1

  

 本書のタイトルは同じ出版社から発売された、「イメージと読みの将棋観」から取ったものと思われます。専門誌「将棋世界」において、トップ棋士6人が「タイトル戦の局面」や「封じ手における駆け引き」など共通のテーマに対して、その読み筋と考え方を惜しみなく披露して好評を得た同名企画の連載からテーマを厳選した一冊。2009年将棋ペンクラブ大賞技術部門大賞を受賞。将棋関係者が誰しも名著と認める傑作です。

 本書の紹介を引用すると「東1局0本場、ピンフのみでリーチするか?」「先行リーチの現物待ちはヤミテンにするか」麻雀における永遠のテーマに日本プロ麻雀連盟のスター雀士が挑む!日本プロ麻雀連盟BOOKS第1は森山茂和、荒正義、滝沢和典、佐々木寿人、二階堂亜樹という超豪華メンバーが独自の麻雀観を惜しみなく披露した一冊。具体的な場面での打牌選択だけでなく、「麻雀に流れはあるか?」「麻雀の上達法は?」という抽象的なテーマについても語っています。本書は自分の麻雀を見つめ直すきっかけであり、最強の麻雀哲学を学んで雀力向上にも役立つ、すべての麻雀ファン必携の一冊です。…とのこと。当時若手の三名は、10年後の今、最高峰と呼ばれるリーグ戦を戦っています。超豪華メンバーの文字に偽りはありません。

 当時ブログで取り上げた内容のままで恐縮ですが、改めて再掲させていただきます。

第1章 セオリーの考察

※ルールは特に指定がある場合を除き、アリアリ一発裏アリ赤ナシ

テーマ1 ピンフのみリーチの是非

東1 南家9巡目ドラ発

123789m45p22278sツモ3p

打2sリーチ ピンフのみでも一発裏アリならリーチしてあがった時平均約3500点の収入になり、9巡目先制ならアガリ率は約60%になります。打点が倍以上になりアガリ率が大きく落ちるわけでもないのでリーチの一手です。

プロも一発裏アリということで亜樹p以外はリーチ(但し69sでなく36p待ちならダマにするかもという意見も)。亜樹pはドラ発を引いた時に切りたくないことを理由に挙げてますが、“選択肢を残す"ことをダマにする有効な理由にするには、アガリ率に比べそのような選択をする確率もまずまずあり、かつそこでの選択で高い確率で正解を選べる必要があります。終盤で当たり牌を特定しやすい他家がいる時ならわかりますが、そうでないなら、自手があまりあがれないという読みと、他家の手牌読みの両方に明確な根拠がなければなりません。ダマテンにする時こそ、その選択をするだけの、“強い自信"が必要なのではないでしょうか。

追記:https://togetter.com/li/117092

 何と「北家がドラ発タンキのチートイツをテンパイしていることが100%読める」と仮定しても、リーチした方が局期待値では上回るそうです!そうなると今回の手牌でダマにするのは、リーチしてアガってもダマでアガった時に比べて順位期待値がほぼ変わらないケースに限ることになりそうです。感覚的には、「一発でアガって裏ドラが乗った時に運の無駄遣いをしてしまったと感じてしまう」くらいの点数状況でしょうか。


テーマ2 先行リーチの現物待ちはヤミテン?

南3南家10巡目ドラ5s 33400点のトップ2位の西家とは2200点差、15700点のラス目西家がリーチ、3m8p9s現物

33678m22267p579sツモ6s

9sリーチ リーチして打点が倍になるリャンメン待ちなら現物待ちでもリーチが有利という結果がシミュレートにより出ています。ラス前のトップ目ではありますが僅差なので原則通りリーチとします。

もしツモ58pなら打9sダマとします。愚形の追っ掛けならアガリ率と放銃率がほぼ同じで、放銃すればほぼ着順が落ち、ツモられてもほぼトップ維持なら降りる選択を残す方が有利でしょう。ツモ8sなら打3mの回し打ち。あがっても大して点棒状況がよくならないのでは無筋のドラは勝負できません。

プロは全員リーチ。リャンメンは好きなのでリャンメンならとりあえず大体曲げるのが私のプロに対するイメージだったりします。


テーマ3 危険を冒してリーチの現物待ちに受ける?


東1南家8巡目

234m244p3456788sツモ3p

親のリーチの一発目、1p58s現物

打4pリーチ 打4pと打8sでは打点が倍くらい違います。放銃する可能性の分アガリ率も減るとはいえ打8sははっきり損です。打4pでリーチするかどうかについては、ダマで満貫になるのは2sだけなので、テーマ2同様リーチします。

プロも全員打4pリーチ。ダマでも危険牌を切れば警戒される、先行リーチとの共通安牌が少なく他家が手詰まりになりやすいことも理由に挙げられてましたが、そういうのはもっと微妙なケースで初めて考えればいいです。打牌選択に影響を与えやすい要素から考えていくことが、精度の高い打牌をスムーズに選択する為に重要です。

テーマ4 同巡二鳴きの是非

東4東家9巡目

567m1134s2356p白白 ドラ3p

対面が打白、同巡に下家が打白

ポン打5p メンゼンで2シャンテンで遅く、鳴けばリャンメン確定の更に仕掛けがきく1シャンテン。はっきり鳴き有利です。守備的にドラそばの5pから切ります。

役牌アンコや役牌とのシャボリーチを打つ可能性が無くなるという“状況の変化"があったわけですから、同巡二鳴きは一貫性のない選択ではありません。二枚目も鳴かなかった時点でアガリ率は大きく落ち、その分攻め込まれる可能性も上がる以上、舐められて攻め込まれやすいというのもナンセンスな考えです。

ただ、手牌の変わらない二鳴きが有効なケースが少ないのも事実です。(今回もそもそも一枚目の時点で仕掛けるべき) 有効なのは役牌と三色、一通の両天秤の1シャンテン、あるいは染め手を見たいが客風を1鳴きするには微妙にメンツ候補が十分でなく、遠いなりにメンゼンリーチもみつつ進めたい時など、両天秤を維持できるうちは打点や後々の選択の為にメンツ選択を先延ばししたいケース等でしょうか。後者の場合は鳴いても遅いので、手の内を読まれないことを理由に同巡二鳴きは避けるのはありかもしれません。

テーマ5 デジタル雀士のセオリーについて

「字牌はダブ東から切る方が良い」というセオリーについてどう思いますか?

自分が子でアガリを主に考える局面で、役牌同士で何から切るかを選択するのであれば、鳴かれたくないダブ東から切るのは実に理にかなった選択であります。
プロは案の定、そのようなマニュアル化はよくない、局所的すぎるとの批判が上がっていますが、このセオリーを提唱している、「科学する麻雀」や「最強デジタル麻雀」は、決して画一的にダブ東を切れと主張しているわけではありませんし、「最強デジタル麻雀」は幾つかの牌姿を挙げ切り順をセオリー化することを試みています。そのような事実を全く取り上げることなくこの質問がされていることに、デジタル麻雀=ワンパターンのような偏見を読者に植え付ける意図があったのではと疑わざるを得ません。まるでどこぞやの世論調査のようです。

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