現代麻雀技術論註第19回「手牌評価はまず打点を意識する」

 

 前回、和了率は「距離、傾斜、速度」の3要素を考慮する必要があると言いましたが、「傾斜」を考慮する必要性を示すための典型的な問題の一つが、12356m34778s1167pからリャンメンを落とすというものです。麻雀研究が進んだ現在では常識になりつつありますが、20年近く前は95%以上の打ち手がリャンメン落としと答えられなかったという記録も残っています。

 しかし、リャンメン落としが大差で有利というわけではなく、あくまで小差であることに留意する必要があります。リャンメン落としが有利なのは平均テンパイ巡目が早いからというよりは、早い段階でテンパイする可能性が高いため。巡目が深くなればなるほど他家にもテンパイが入りやすくなるので、テンパイまでかかる巡目が同程度であれば、先手を取れる可能性が高い選択が有利になります。ちなみに上記の牌姿を「ツモアガリ確率計算機」に入れてみると、和了率はほぼ変わらず、「平和がつきやすい」という理由でリャンメン固定の打7sが期待値で勝るという結果になります。このことからも、リャンメン落としが有利なのは「先手を取れる可能性が高い」ためであり、一人麻雀想定なら微差であることが分かります。

 小差なら「場況」で覆るのではないかと考えがちですが、リャンメン同士の優劣を考慮しない前提でリャンメン落としが有利なのですから、場況に特徴があればより有利なリャンメンを残しやすくなおのことリャンメン落とし寄りになると考えられます。

 それでは同様の牌姿はほぼターツ落としが正解になるのかと言われればそうでもありません。「場況」よりもずっと重要な要素があります。それが「打点」です。

 34778m23456p1156s ドラ4p 

 先程と同様の牌姿で、リャンメン落としの優位性を取り上げている記事を見受けましたが、この手牌はタンヤオ受けがあるのですから明確に打1s有利。昨今ではデータを用いた麻雀研究が行われる前よりは和了率重視の手組の優位性が知られるようになりました。しかし和了率は小差の比較になることが多い一方、打点は1翻アップで大きく上がることから、手牌評価はむしろ先に打点を意識した方がやりやすいものです。

A 234778m23456p56s

B 234778m23456p11s

 前回同様マンズがメンツになった1手先のケースに着目します。アガリ率は小差だから打点差が大きい手牌Aが有利であるとお分かりいただけますでしょうか。リャンメン落としかリャンメン固定かの二択に囚われて、第3の選択肢を見落としているというのも前回と同じ。人は複数の要素をそれぞれ考慮するのは誰しも苦手でありますから、改めて「共通の有効牌を引いた1手先の手牌を考える」「最初から複数の要素を踏まえたうえでの、手牌の優劣を覚えてしまう」ことをお勧めします。

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