現代麻雀技術論註第16回「選択の技術『手作り』『押し引き』『状況判断』『読み』(後編)」

③状況判断 

 ここで言う状況とは点数状況のこと。河の状況を打牌選択に反映させる技術は④読みの範疇です。フラットな点数状況、いわゆる平場であれば「局収支」を最大化することを目指しますが、オーラス何をアガっても逆転トップであれば、当然最もアガりやすい選択が正着になります。点数状況によって局の目的が変わり、押し引き、手作りの判断も変わるのですから、選択の手順は、「目的の認識」→「押し引き判断」→「打牌選択」となります。

 『現麻本』第1章「手作り」第2章「押し引き」については、平場ベースの基準を取り上げましたが、編者の福地氏も感想にもあったように、手作りは打点偏重の向きがあるという意見がよくありました。第2章についても従来の基準よりは押し寄りで、『現麻本』に限らず、昨今のデータを用いた戦術本の押し引き基準は押し偏重ではないかと疑問視されることもあります。

 「オーラス何をアガっても逆転トップであれば、最もアガりやすい選択が正着。」「オーラストップ目で放銃すると2着順以上落ちるなら、降りることが多い。」「麻雀に熱心に取り組む実力者ほど、オーラスをトップ目で迎えることが多い。」第10回でも触れた通り、違和感の正体はデータではなく、打ち手の経験の側に偏りがある為と考えます。フラットな点数状況における基準よりは、アガリ率重視、失点回避重視で打つことになることが多いものです。トップ目を例に挙げましたが、「ラス目でも安手のアガリで順位が上がるなら平場以上にアガリ率重視になる場合がある。」「元々アガリに遠いうえに安手ならラス目でも押し有利にはならない。」のように、ラス目でも言うほど打点重視、失点回避軽視にならないことでも説明がつきます。

 「局収支」ではなく、「順位点込みの収支期待値」が分かればそれに越したことはありません。しかしそれは現状では難しいので、局収支ベースの判断を踏まえたうえで、点数状況で一定の補正をかけることで対応します。「プロスペクト理論」に見られるように、人は期待値に沿った判断をするのが苦手ですが、定量化しにくいものに補正をかけて判断することはある程度出来るようになっています。ですから局収支ベースの基準を踏まえたうえでは、「分からないものは考慮しない」ではなく、「分からないなりに考慮する」スタンスで実戦に臨まれることをお勧めします。

④読み

 「点数状況」で判断に補正をかけるのが「状況判断」なら、「河状況」ないし「対戦相手の情報」で判断に補正をかけるのが「読み」です。

 「読み」を排除せよとは、2004年出版『科学する麻雀』の見出しにある言葉ですが、それ以前の麻雀本で書かれていた「読み」は、(1)そもそも内容が間違っている (2)内容は正しいが、読みを入れずとも同じ判断ができる (3)内容も正しく、判断のために読みを入れる必要があるが、局所的なので重要度は低い。三つのうちのいずれかでした。

 しかし「読み」を考慮せずとも優劣が明確なら読みが不要というだけで、優劣微妙であれば、(2)で取り上げられてきた読みを考慮する必要もあるでしょう。また、(3)についても、(3)を意識し過ぎるあまり一般化しようとすると(1)になることが問題というだけで、重要度が低いと言っても、麻雀で勝つための考え方を押さえるうえでは避けて通れない技術とも言えます。 私が、「現代麻雀技術論」を書こうと思い立ったのは、「手作り」「押し引き」「状況判断」について、これまでの戦術記事より突き詰めたものを作るためでありましたが、突き詰めようとすればするほど、「読み」は決して無視できるものではないと気付かされました。

 3回に渡って「選択の手順」をまとめましたが、言葉にすると高度で複雑な思考が必要に見えるというだけで、実際の判断はもっとシンプルかつ直感的なものです。具体的にどのように判断するのかについては、「楽しく勝つための現代麻雀技術論」シリーズで今後取り上げていければと思います。

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