麻雀用語を用いない麻雀講座を考える第8回「役の成立過程とともに効率よく役を覚える」

 現在の日本麻雀では基本的に38種の役が採用されています。入門者が1から覚えるには量が多いですが、1つ1つ丁寧に教えるのは何とも効率の悪いやり方。麻雀のルールの大半は役と点数計算の説明になってしまうので、ルールを一通り覚えてから実戦に入ると手役を狙い過ぎる打ち手になりがちです。

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 まずは「リーチ」「タンヤオ」「役牌」の3つを覚えて、実戦では勘…ではなく、第5回のトレーニングを活かして、雀頭と門子を作ることに力を入れましょう。

 タンヤオは漢字で書くと「断么九」。文字通りヤオチュウ牌(19字牌)を使わない役ですが、「2〜8だけで作る」より「19字牌を使わない」のように否定形で捉えると覚えやすいと聞きます。リーチなら、「門前」より、「鳴いていなければリーチができる」、役牌なら「三元牌か場風牌か自風牌」より、「役にならない字牌(客風)」は何かに着目。確かにその方が「鳴いたはいいけど役が無い」のような入門者にありがちなミスを防止するうえでもよいかもしれません。

※ただし、否定形で物事を捉えた方が覚えやすいという性質こそ、初心の域は脱出してもそこから伸び悩む打ち手が多い原因でもあるので、私個人としては肯定形で捉えるように心がけています。

 残りの役はいつ覚えるのか。実戦と座学はワンセット。疲れたので打ち止めにする時。打ちたいけど時間を取るのが難しい時。そのような空いた時間に覚えてしまうのがよいでしょう。独立した物事を38種も覚えるのは大変ですが、麻雀の役はそれぞれが関連性を持つものが多いので案外簡単に覚えられます。

 38種の役をいかに分類するか。私なら翻数や使う牌の種類ではなく、1雀頭4門子の5組のうち、使用牌に制限があるのが何組か(0〜5)で分類します。

0組 立直、両立、自摸、一発、河底、海底、嶺上、搶槓、地和、天和

 0組は役満とダブルリーチ(2翻)を除き全て1翻。リーチ以外は偶然役とも言われるように、役がつくかどうかは偶然。逆に言えばリーチだけは使用牌に制限がないうえに自分の意志で役をつけることができます。「リーチが強い」理由は色々と説明がされますが、根本はここにあるんですね。

1組 役牌

 1組は役牌のみ。1組だけで1翻なのでコストパフォーマンスが良いです。ついでに言えば1枚で1翻のドラは、役にはなりませんがコスパ絶大です。

2組 一盃

 2組はイーペーコーのみ。1翻に2組使うのでコスパはそれなり。鳴くと役にならないのは、「役の構成牌に順子を含む(可能性がある)ものは鳴くと1翻下がる」で説明がつきます。1翻役なので鳴くと0翻だから役にならないということです。

3組 三色、一通、三暗、同刻、三槓、小三、大三

 3組は大三元の役満を除いて全て2翻役。順子で構成する三色同順と一気通貫は鳴くと1翻になります。

4組 対々、二盃、四暗、四槓、小四、大四

 雀頭(小四喜は1門子)には制限がない4組。役満以外はトイトイが2翻、リャンペーコーが3翻。リャンペーコーは単にイーペーコー×2で2翻だった時期もありますが、コスパが悪過ぎるという理由で3翻に修正されました。しかし単にイーペーコー×2だった時期の名残なのか、鳴くと1翻減ではなく不成立。やっぱりコスパが悪過ぎるのですが、特定役のコスパが悪い理由は麻雀のルール変遷を知れば明らかになります。いくらコスパが悪くても、無いよりは有った方がマシくらいのつもりで覚えておくとよいでしょう。

5組 断九、平和、混九、純九、混一、清一、混老、清老、字一、緑一、九蓮

 1雀頭4門子全てに制限がある5組。制限が緩やかなタンヤオ、ピンフ(1翻)、役満とホンイツ、ジュンチャン(3翻)、チンイツ(6翻)以外は2翻役です。牌構成に順子を含む(可能性のある)役は1翻下がるのが原則ですが、この原則に従ったのが「クイタン無し」ルールとも言えます。

 そうなるとクイタン有りより無しの方が歴史的に古いのではないかと思いがちになりますが、古いのは有りの方。麻雀にリーチが導入される前は食い下がりの概念が無く、役満とチンイツ(3翻)以外は全て1翻。何とタンヤオだけでなくピンフも鳴いても成立していたのです。

 麻雀にリーチが導入され、リーチを巡る攻防を中心とするゲームにするために、「1翻縛り」「食い下がり」ルールが導入されました。その時にピンフは門前限定になりましたが、タンヤオは鳴いても成立するものとみなされました。

 その理由は「クイタンは残していた方がゲーム性が豊かになると考えられた」ため。現行のリーチ麻雀が成立してから実に70年近い時が経つのですが、こうした歴史背景を踏まえてみると、昔の麻雀は手役作り重視というのは一部の流行に過ぎず、本当の強者は昔から速度を意識した効率重視。麻雀というゲームの本質を見抜いていたように思われます。

 ホンイツは1翻(リーチ導入以前)→2翻→3翻、チンイツは3翻(リーチ導入以前)→4翻→5翻→6翻と、手役の中でも何度も上方修正を受け優遇されてきたという経緯があります。しかもホンイツは役牌とセットになりやすい。基本役「リーチ、タンヤオ、役牌」の次に覚えるべきは、ホンイツ(チンイツ)であることがよく分かります。

 基本的な役にもかかわらず、入門者にとって覚えにくいのがピンフですが、「平和」が、「符の平たい和了」を意味することを知れば、成立条件①全て順子②両門待ち③雀頭が役牌でない④門前であることを押さえやすいのではないでしょうか。(更に言えば、「符の平たい和了」の原則に従ったのが、「ツモピンフ無し」ルール。ツモピンフ有りが主流になった理由は以下のような背景があったようです。)


その他 七対、国士 

 1雀頭4門子の原則外の役。国士無双は役満。七対子は2翻です。入門者がまず覚える役は「リーチ、タンヤオ、役牌」次に「ホンイツ、チンイツ」その次は諸説ありますが、個人的にはチートイツを推したいところ。理由の一つはチートイツより出現率が高い他の役に関しては、「リーチ、タンヤオ、役牌」を狙う過程で複合させやすく、特別手作りを意識する必要が薄いということ。もう一つは、チートイツは2翻25符固定なのでツモアガリの恩恵が大きく、出現率が低いとはいえ決定打になりやすいということ。以上から、基本役の作り方が身に付いた後に押さえておきたい役であると考えます(逆に言えば、基本役の作り方が身に付く前に意識すると勝ち味の薄い打ち筋になりがちなことが、過小評価されがちな理由とも考えられます。)。

番外 流し満貫(么九振切)

 競技ルールでは不採用であることが多いのでローカル役に分類されますが、ローカル役の中で最も有名なうえに、他の役とは完全に別物。流し満貫表記が一般的ですが、名が体を表していることと、ルールによっては満貫でないことから、個人的には么九振切(ヤオチュウフリキリ、略称は振切)表記の方が望ましいと考えています。

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