ネマタの「裏」麻雀本レビュー第44回「麻雀強者の流儀」編その7

第二章 手順の流儀

 「安全牌を持つのはカモ」「準安全牌をうかつに切らない」が対になっています。メンツ中抜きのようなベタオリをしない人ほど、手牌に不要な安全牌を持っても効果が薄いですが、必要牌の中で比較的安全な牌を残すことは重要になるのです。

 手牌に89p12sとあって残りが全て中張牌なら、9pか1sを切ってタンヤオ狙い。次巡更に中張牌を引いた場合に、ペンチャンを残すか、両方とも落として8p2sを残すかは手牌次第。具体的な手牌例が出ていませんが、手牌例を出さない程度にはメンツや雀頭が完成していないアガリに遠い手ということでしょうから、ペンチャンを残してもメンゼンではテンパイしづらいとみてクイタン本線で進めるダブルペンチャン落としが有力であるとは言えそうです。

 本書ではドラ8pの場合、ドラ表示牌の7p待ちが残ることを嫌ってあえて打9pとするとありますが、これだけの条件なら流石に打1sとします。ドラ1の表示牌ペン7pテンパイとドラ0のペン3sテンパイの比較でも基本前者が有利であるうえに、アガリに遠い段階ほどテンパイ以前に7pをツモってくることが期待できるためです。

 筆者がこのような打牌を推奨する理由の一つに、ベタオリを好まない打ち手であるということが挙げられます。ベタオリは滅多にしないという人でも、手牌がまるでバラバラなところからリーチに対して進んで危険牌を切ったりはしないもの。守備に難があって勝ちきれない人は、中途半端な手牌から、中途半端にリスクを犯してしまい失点を積み重ねているのです。そのような人であれば、ツモが噛み合なかった時は諦めがつきやすい手組にした方が勝ちやすいということは有るかもしれません。

 もう一つの理由として、将棋棋士に三人麻雀の愛好家が多いということも挙げられるかもしれません。日本将棋連盟の棋士達で行われている三麻のルールについては、先崎学九段がコラムで紹介していたのを見たことがありますが、マンズの1mと9mも抜きドラで、オンライン麻雀で行われている三麻よりよほどインフレルールだったと記憶しています。

 ドラ表示牌待ちのペンチャンリーチドラ1と、ペンチャンリーチのみなら前者有利と申しましたが、これがドラ4とドラ3であればだいぶ後者有利に傾くのではないでしょうか。ドラが多ければ多いほどドラ1枚あたりの価値は下がり、アガリやすいターツを残す技術の重要性が高まると言えます。

 中張牌ほどターツを作りやすいので、危険牌として浮いてもリカバーしやすい。このメリットを強調するところからも筆者が、なるべくベタオリせずに押し返す打ち方を好んでいることがうかがえます。

 具体的な放銃率は、『統計学のマージャン戦術』を御参照下さい。確かに端牌という理由でそこまで放銃率が下がるわけではありませんが、端牌が(中張牌より)安全というのが「嘘」と言うことはありません。筆者は牌を1枚切った時の放銃率ではなく、最後まで押した時の放銃率に着目しているようですが、後者はそれこそ「切る切らない」の選択次第なのですから、牌の危険度については前者の観点で話されているものと考えるのが自然なことでありましょう。

 筆者のような打ち手ほど、不要牌が安牌だとしても残す恩恵が薄くなることは再三取り上げてきましたが、その不要牌が「切るしかない」中途半端な危険牌ならなおのことデメリットが大きくなるわけですね。実戦巧者は、「自分が好む戦略が勝ちやすくなるような戦術を無意識のうちに選び取れている」ように思われます。

 「好きこそものの上手なれ」という言葉もありますから、筆者のようなスタンスが合っている人も少なくないでしょう。しかし私としては、これから麻雀を学ばれる人には「どんな麻雀も好きだからこそ、実戦では手牌、局面、ルールに応じて最も勝ちやすくなるような戦術を意識して選び取る」ことを目指して欲しいと思います。

5 鳴いてアガられる方がリーチでアガられるより失点が少なくなりやすいので、自分のアガリが遠い場合はある程度引っ張ってから役牌を1枚切り出すのも有効な戦略です。

 0メンツ4トイツ、マンズが場に高いとはいえ、1sより3m6mを先に切っているのも筆者らしい手順。これくらいならメンツ手もみてマンズ中張牌を残す人が多そうですが、そうすると後手を引いた時ほぼベタオリせざるを得なくなるのを嫌ったというところでしょうか。

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 私は455p白白 ドラ白の場合も打5pリーチを推奨します。5p白シャンポンもドラ白だと通常の数牌悪形待ちとアガリ率は同程度。リャンメンが36p待ちとしても、リャンメン待ち全体の平均よりアガリ率が大きく下がるというわけではないので、リーチツモで満貫に届く手から待ちを狭めるほどではないと判断します。

 

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