ネマタの「裏」麻雀本レビュー第13回『夜桜たま×朝倉康心に学ぶ現代麻雀』その1

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「ここ数年の麻雀本では珍しいレベルの駄作」とまで言い切ってしまい、流石にオーバーだったかなと本書を読み直して見たのですが、少なくとも2019年に出た麻雀本の中では最低の出来と言わざるを得ません。某所では萩原プロの麻雀本が最低評価とされていましたが、麻雀打ちとしての萩原氏の魅力が表現されているという点を踏まえると、個人的にはここまで低評価ではないですね笑

 本書がこのような出来になってしまった理由は容易に想像つきます。例の騒動の為、このタイミングで出さなければ完全にお蔵入りになってしまうことから、手直しが一切されぬまま発売せざるを得なくなったのでしょう。本作は(当時の価値観では)、これまでにない豪華な組み合わせにも関わらず、両氏の魅力がまるで発揮されていません。素材がイマイチだけど味付けはそれなりの料理と、素材が豪華なだけの不味い料理。印象で後者に高評価をつける方も少なくないと思いますが、麻雀本レビューを続けてきた身としては、後者に前者以上の評価をつけるわけにはいきません。

 萩原本は萩原氏のファン向けに書かれていることが想定されるのに対して、本書は麻雀のルールを知っている程度の初心者にも広く読まれるであろうことも低評価を下さざるを得ない要因です。確かに文中に堅苦しい説明こそ少ないですが、初心者が参考にすべき重要な技術について具体例がほとんど出てこないばかりか、ブラフやだの迷彩だの手順読みだの、初心者が無理に取り入れようものならかえって上達の妨げになるような話が少なからず登場します。

 「正しい打ち方ではなく、楽しい打ち方のために」がコンセプトだとしても、やはり低評価を下さざるを得ません。例えば、「高くて綺麗な手を和了った画像」が出てくれば、取り立てて高度な手順が無いとしても、麻雀の楽しさは十分に伝わります。

 しかし本書で登場する天鳳の画像は、何とも地味な局面ばかり。天鳳で何千戦も打っていれば、誰かに見せたくなるような「会心の局」がいくつかあってもよさそうなものですが。昔の麻雀プロが書いていたような本は、「正しい打ち方を学ぶ」という観点では駄作でも、麻雀の魅力だけは存分に伝わってくるものでしたが、本書にはそれすらありません。

 そして本書の最大の問題点は、具体的な牌図が登場するにも関わらず、「私はこういう理由で、この牌を切る」という記述が無いまま解説が終わっている箇所が大多数であること。「私はこう切る」と断言してしまうことで、「正しい打ち方ではなく、楽しい打ち方のために」というコンセプトに反する恐れがあると考えられたのかもしれませんが、繰り返すように本書には「麻雀打ってて楽しくなるような局面」が全く出て来ないのです。

 次回から具体的なレビューに入りますが、批判に終始するのも不毛なので、本書の記述を「正しさ」と「楽しさ」を兼ねたものにするにはどうすればよいか、自分なりのアイデアを挙げていこうと思います。

 

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