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がんばれ藍住さん④

 今回から5回戦総得点勝負(但し5戦目以降のトップ者が総得点でラスの場合は延長戦)となりました。


 藍住さんはひとまず字牌のトイツを切ろうとする癖があります。浮き牌の2pが現物なのでそれから切りましょう。西で七対子などに振り込むことも日常茶飯事です。

 藍住さんは和了よりドラを可愛いたがり。浮き牌のドラというのはアイドルの卵のようなもの。デビュー目前(テンパイ)のアイドルグループが控えているのに新人オーディションをしている場合ではありません。更に言えばこの手は既に中ドラドラでダマでも出和了5200。アイドルの卵もたくさん居たら価値が下がるというものです。

 藍住さんは現在点数計算絶賛勉強中。前図は出和了40符3飜ダマ5200だったのでどちらかといえばリーチしてそうでしたが、今回は中2pが暗刻なので出和了50符3飜になりダマ6400。打点上昇効率が大きく下がったのでダマが良いでしょう。三麻は50符の出現頻度が四麻に比べてかなり高くなるので要注意事項です。

 和了を簡単に諦めないのは藍住さんのいいところ。7pが残り1枚しかないとなると7pを抜いてでも降りたくなりますが、7pは唯一の現物で、7pの次に通りやすいのは東。すなわち東が当たり牌だったとしても、その場合は7pから切っても放銃を回避できないことが多い。それなら今回は和了できれば親で跳満以上の手。2番目に安全な東から切って、僅かばかりでも和了の可能性を残した方がよいのではないでしょうか。

 想像以上に手牌が伸びて、リーチを掛けたら一発ツモ裏3で数え役満!安易に7pを抜いていたらこの和了はありませんでした。

 「初心者はまずベタオリから学ぶべき」「ベタオリするならメンツを抜いてでも一番通りやすい牌から切る」。私もそのように教わってきましたし、「麻雀界隈における信頼できない語り」として印象に残っているものを挙げるとするなら、「初心者はベタオリするな」「リーチがかかって迷ったら敢えて2番目に通る牌から切る」の2つです。

 しかしどうでしょう。今回の役満に至るまでの手順。字面で見ただけでは全く納得いかない2つの格言が見事にまで噛み合っているではないでしょうか。

 最近は「言語化」という言葉をよく聞くようになりましたが、改めて安易な言語化の危うさに気付かされた次第。「信頼できない語り」を鵜呑みにすると基礎も身に付かない打ち手になりかねませんが、そうしたものを全て排除して、「言語化しやすいものだけを言語化」しようとすると、今度は基礎しか身に付かない恐れがあります。麻雀界隈は言語を共有する環境を持ち合わせてないので尚更です。

 藍住さんに安易に字牌のトイツを切ろうとする癖があることは先程申し上げた通りばかりですが、一番肝心なところでその悪い癖が出てしまいました。

 痛恨のテンパイ逃し

 痛恨の和了逃し。

 そして痛恨の振り込み。私視点からはリーチして4sツモでもトップ取れないけどダマで4s直撃ならトップだったのでまさにデバサイ。西を切ってしまったミスの理由についてはいくつか考えられます。

①雀頭候補としての対子と、メンツ候補としての対子との区別が不明瞭。

 麻雀の和了には必ず雀頭が一つ必要。だから西対子を雀頭にするのですが、今回の牌姿は5p4sも対子なので雀頭候補としての役割を果たせなくもありません。

 しかし5p4s共に三門張を含むメンツ候補の一部。手牌をアイドルグループに例えるなら、メンツがアイドルで雀頭はプロデューサー。デビューすれば大ヒット間違いなしのスーパーアイドルに、プロデュース業を任せたりはしないのであります。

②西以外が全てタンヤオ牌だったのでタンヤオを意識してしまった。

 麻雀牌を人材に喩えるなら、数牌が女子で字牌が男子。麻雀牌は一種四枚。年齢を4で割って四捨五入すると、10~29歳が3~7に該当。日本人がアイドルと聞いたら、誰しも10代から20代の女性を思い浮かべます。だから浮いた字牌から切って真ん中の数牌を残そうと言うわけです。

 ただ、浮いた字牌から切っていく話は極めて言語化しやすいので、あまり強調すべきではなかったとも思います。確かに藍住さんは字牌を残したがる癖があり、多くの人から突っ込まれてきたのでそこは改善したのですが、浮いた牌が無くなってからミスしないことの方がずっと大事。しかもその手の打牌選択は、「実力者は自然と正着を選べるが、言語化しようとすると途端に難しくなる。」ものが多いですからね。

③ツモってきた牌が今から切ろうとしていた西だったから。

 一手先のテンパイ逃し、和了逃しの牌姿を見れば、麻雀のルールさえ知っていれば誰しもミスだと分かる打牌。しかし実際にミスが起きてしまったのですから、ミスの理由は純粋な手牌以外、今回の場合はツモ牌にも原因があったと考えられます。さしもの藍住さんも最初から西が雀頭だったら西を切らなかったでしょう。私は特殊な例を除き何切る問題にツモ牌は不要という立場を取ってきましたが、それはあくまで判断基準を学ぶためのツールとして捉えた場合の話。正しく手牌を認識出来たか、判断した通りに打牌を実行出来たかを確認するうえではツモ牌も必要なのかもしれません。

④説明がつかない打牌を避けてしまいがちだから。

 西切りがミスなのは明らかですが、打4sと打5pならどちらが良いかについて説明が付けられる方がどれ程居ますでしょうか。正直私は手牌の形がほぼ対称形なのでどっちでも良いと判断してしまいました。

 改めて見返して判断するなら、打5pならテンパイ時に切る牌は347s。打4sなら256p。3sが東家の現物なのでテンパイ打牌が安全になりやすいのは前者。故に打5pでしょうか。手牌で判断がつかないなら、考慮すべきものは場況と将来の打牌にあります。

 無論この程度の差は然程気にするほどではないのですが、二択が選べないあまりその二択より損な三択目以降の打牌を選んでしまうというのもありがちなミス。藍住さんはこう見えて理屈っぽい人なので、自分が理屈で説明出来ない打牌を選びたがらず、その結果として似たようなケースで似たようなミスを重ねてしまっている傾向があるのかもしれません。

 然し、二択で迷いがちな手牌で「意外な三択目」が有効になるケースが案外珍しくないのも事実。しかもそうした打牌は見落とされがちなうえに有効性の言語化が難しいもの。今回みたいな何てことない牌姿でも、解説する立場になってみると色々考えることがあるのですね。本当に頑張らないとならないのは私なのかもしれません。がんばれ音叉さん!

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