ネマタの「裏」麻雀本レビュー第48回『麻雀強者の流儀』編その11

第四章 動きの流儀

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 字牌を切らなそうな河の他家が居て、タンヤオならテンパイを外しても4種+チーでリャンメンテンパイに取れる1シャンテン。テンパイを外します。大会形式のような条件戦は、「安手でアガるわけにはいかない」他家が増えるので、オーラスでも字牌の出が期待しにくい場になることが多いことは押さえておきましょう。

練習問題

 二度受けとはいえ2巡目でリャンメンが揃った1シャンテンなら鳴かずともアガれることが多いもの。先に36sツモなら9s安めでもリャンメンテンパイが残った方が有利なので打8pとしそうです。ドラが8p(ドラ5pの場合より他家からドラが出ることが期待しやすい、赤5pでも満貫、5p周辺を引いてメンツが出来てもドラが出ていかない)なら78s落としくらいのイメージです。

 大三元のコツはホンイツ拒否とありますが、むしろホンイツを拒否しない方がよいという説もあります。これは手牌や対戦相手の打ち筋にも左右されそうです。本書のように白白白発中とアンコが1つ完成しているのであれば、ホンイツを警戒さえされなければ、発中が重なった時に他家から鳴けることが期待しやすく、「ホンイツに見せない」打牌が有力になると考えられます。

 一方、白白発発中とアンコが無い場合はどうでしょうか。「本当に大三元にしたければアンコが出来るまでは1枚目は鳴かない」という説もありますが、役満以外のアガリに価値がないというのでもなければ流石に悠長というもの。この場合はいずれにせよ大三元が警戒されてしまうので、「大三元のコツはホンイツ拒否」を逆手に取ってホンイツに見せるのが有力と考えられます。実際にこの戦略が功を奏して大三元をアガった例が天鳳名人戦でありました。

 ただし筆者が所属する雀鬼会に限らず、「三元牌が2つポンされているところに3種目の三元牌は何があっても切らない」と考える打ち手も少なくありません。その場合は自力で1つは暗刻にしないと大三元にならないのですから、アンコが無い場合も、「ホンイツに見せない」打牌に分があると考えられます。

 役牌ドラの後々付けは言われなければなかなか発想に至らない選択。いずれにせよ役牌ドラを切る手順が無いのであれば狙ってみるのもよいでしょう。余談になりますが、雀鬼会では後付けのアガリが禁止されているにも関わらず筆者がこのような仕掛けを多用しているというのが面白いところ。元雀鬼会の土田プロが、同じく雀鬼会で禁止されているノーテンからのドラ切りを多用するのとある意味対照的とも言えます。

 昔からよく言われるホンイツ狙いのテクニックの一つ。5pが先に埋まることより、ポンできる牌が出ることずっと多いので受け入れロスもさほど気になりません。

 2フーロ2シャンテンから8sを鳴かない方が本当に良いのかは今後の研究課題になりそうです。3フーロ目を入れなかったために他家が降りずにそのままアガられてしまう展開も有り得るので、それこそ状況次第な気がしますね。

4 赤々という理由でさほどアガリを急ぐ必要はないという考えには同意します。「安くて遠い仕掛けはしない」も昔からよく言われますが、「他家の焦った安手アガリを誘発させる」狙いの仕掛けについて触れられているのも好感が持てます。しかし、「むしろ逆」は流石に誇張表現が過ぎましょう。点数計算の都合上、高い手ほど鳴き寄りに傾くのは間違いありません。

 筆者は手牌だけでなく展開を考えながら打つことが大事と主張されていますが、ドラが多いという理由で焦った仕掛けを入れたり、ドラが無いという理由で仕掛けるべき手を仕掛けないのは、展開を考えられていないというより、そもそも手牌を「正しく」見られていないことに原因があるように思われます。ドラの有無に依存せず、手牌の形で判断が決まる鳴きも少なくありません。『麻雀勝ち組の鳴きテクニック』ではそうした鳴き判断について具体例が非常に多く取り上げられていて参考になります。

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 2フーロしてノーテンなら場所によって鳴かないことも考えますが、テンパイなら流石にリャンメンからでも鳴きます。

 筆者のように、「2フーロしたら何が何でもアガリきる」つもりで打たなければならないのであれば、「2フーロしても降りてよい」場合よりも2pチーが損になることは言うまでもありません。そしてその決め事に従って打っている以上、ますます筆者の中ではそれが勝ちやすい選択になっているのです。

 「強者は無意識のうちに自分にとって勝ちやすい戦略を選ぶことが出来ている」と以前申しましたが、悪く言えば、「強者であっても自分の好みを優先するあまり、最善とは言えない戦略を選びとってしまっている」ということ。繰り返しになりますが、これから麻雀を学ばれる方は、自分の価値観に麻雀牌を合わせるのではなく、麻雀牌に自分の価値観を合わせていくことをお勧めします。

 実は鳴く相手が上家か下家かで鳴きを入れるべき巡目が変わることを示したデータが既に存在します! タンピンの完全1シャンテンのようにテンパイを入れたらかなりアガリやすいが、鳴くことで打点が大きく下がるので鳴くかどうか迷う手牌の場合は、上家から出た場合は下家から出た場合に比べて鳴きを入れるべき巡目が3巡も遅くなります。

 今回のようなチートイツ2シャンテンでもある手牌も、展開次第で鳴くかメンゼンで進めるか判断が変わりやすいところ。下家からは鳴くが上家からはスルーというのも案外合理的な気もしますね。


 

 

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